光石 研 -男の肖像時計の選択(パワーウオッチVol.42)

左は50年代のアメリカンウォッチを代表する銘品、ハミルトン ベンチュラ。右のチュードルは、ロゴ部分が赤い通称「赤レンジャー」と呼ばれるモデル。古き良き時代への憧憬を感じさせるセレクション

 

実はビンテージなアメリカンファッションの熱烈なフリークである光石さんは、アンティークショップを頻繁にチェックしている。気に入った時計にもそうした店で出会うことが多いようだ。

「若いころにフィフティーズのブームがあって、それに完璧にやられてしまったんですよね。当時はまだ古着ショップも少なかったけど、原宿のボイスやデプトなどによく行ってました。そのせいで時計もアンティークが好きなんです。お金がなかった若いころは、おばあちゃんに貰った昔のセイコーなどをよく使ってましたよ」

若いころにフィフティーズのブームがあって、それに完璧にやられてしまったんですよね---

愛用している時計も、ビンテージショップ巡りで培われた嗅覚で探し出してきたものだ。決して高価なアイテムではないが、非常にこだわって選んでいることがわかる。まず1本目に挙げてくれたのが、アンティークのチュードル。

「本当はロレックスのエクスプローラーが欲しかったけど、高いからなかなか思い切って買えずにいたんです。このチュードルは2~3年前に偶然見つけました。エクスプローラーと違って文字盤の12時部分にちゃんと数字が入っているし、赤いロゴが効いているところもすごく気に入ったんですよ。古い時計なのに止まることもなく調子がいいので、最近はもっぱらこれを使っています」

僕は高価なブランドを買ったり、沢山コレクションしたりするわけじゃないけど、物へのこだわりは強いかもしれない。

そしてもう1本はハミルトンのベンチュラ。古くはエルビス・プレスリー、最近ではクレイジーケンバンドの横山剣氏が愛用していることでも有名な、ロックンロールの匂いを感じさせる時計だ。

「渋谷の宮下公園のそばにOKI( DOKIって古着のお店があって、若いころにゴールドのベンチュラが置いてあったんです。かっこよかったけど、当時は本当に貧乏だったから買えませんでしたね。これは数年前に手に入れたもの。友達のショップが別注で作ったもので、ベルトにゴムが入っているのと、短針の先が赤くなっているところがポイントですね。僕は高価なブランドを買ったり、たくさんコレクションしたりするわけじゃないけど、物へのこだわりは強いかもしれない。デザイン的に少し捻ったものが好きなんです。そうした部分は子供時代からずっと変わってませんね」

 

光石 研俳優)
KEN MITSUISHI 1961年9月26日、福岡県生まれ。78年に映画「博多っ子純情」でデビュー。映像の中で独特の存在感を発揮し、善悪両方の役柄をこなせる貴重な俳優として、多くのテレビドラマや映画で活躍している。その演技力には映画通たちも一目置いており、今年5月にはデビュー30周年を記念して出演作を集めた「光石研映画祭」が開催された。近年の出演作は「パッチギ!」「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」「20世紀少年」など。