とにかく今年の夏は暑い。気温35度、湿度80%と不快指数マックスの日が続く。そのため電車や大きなビルなどの公共の場は特に冷房がガンガン効いていたりする。そのためそんな気温や湿度が低い屋内から、うだる暑さの屋外に出たときに、ムッとする強烈な熱気に加えて、筆者の場合はメガネをかけているためそれが曇ることもしばしば。それだけ外気の湿度が高いということなのだろう。
実は、筆者がプロデュースしている時計ブランド“アウトライン”でもメガネ同様に「曇る」現象が腕時計の風防ガラスで起こった。それはまだ購入して1カ月も経っていないというお客様からだった。
商品を送ってもらい検査をしたところ時計自体には問題はなかったのだが、確かに内部に湿気が入ってしまっていた。原因はネジ込み式リューズを閉めずに毎日使い続けていたことだった。屋内と屋外との異常な気温差は、この時期の時計にとっては“湿気”に対する注意が特に必要ということなのだろう。
先日、ヴィンテージロレックスを得意とする修理技術者のクロノドクターこと久保氏に、この話をしたところ、まさにいま「室内から外に出たら風防が曇った」という1980年代ミルガウス(Ref.1019)の修理依頼が来ていて、原因はケースの錆び、腐食だったと言う。
久保氏は、特に何十年も前の古いモデルについては3年ぐらいでも錆は出てしまうため、頻繁に着用する人は定期的なメンテナンスはやっぱり必須とのこと。
「ロレックスの場合は、ムーヴメントが優秀で、精度が悪くなるということが少ないために、どうしても定期オーバーホールをみなさん怠りがちです。ただ長く使ううえでは精度はもちろん、防水性を保つことも重要なので、なるべくならオーバーホールに出して各パッキンの交換をするのが理想です」
特に古いモデルでプラスチック風防の場合は、湿気入りが多いため防水テストだけでもやっておくと安心とのこと。可能であれば風防自体も新品に交換した方がいいと久保氏は言う。
「風防のパッキンはもちろん、裏ブタのパッキンも交換しないで使っていると硬化してしまい気密性が下がります。そうなるとケースと裏ブタの噛み合わせ部分が腐食して膨らんでしまい、さらに防水能力が低下する可能性があるため、必ず点検だけでも出してほしいものですね」
ちなみに、一度風防が曇ったものの自然と曇りが取れたために、そのまま使い続けたとするとどうなるのかを聞いたところ。
「曇りが出たということは水没したのと同じことです。つまり湿気が入りやすくなっているのにもかかわらずオーバーホールで原因を確認せずに使い続けるとムーヴメントに錆が発生し、文字盤や針の劣化にもつながります。曇りが発生したら直ちにオーバーホールに出すことをおすすめします」
心当たりのある人は、迷わずオーバーホールということだ!
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