元旦に実施されたロレックスの国内定価改定について、すでにご存じの方も多いと思われるため、当連載ではこれまでの定価改定について過去に遡ってみたいと思う。
筆者が刊行する高級時計の専門誌「パワーウオッチ」のバックナンバーを見返してみると、2000年代の定価改定は2007年の1回だけだった。その後、安倍内閣が発足した12年以降、それまでの円高から一気に円安へと進む。
加えてスイスフランの異常な高騰の煽りを受けて、メジャーブランド各社がたまりかねて一斉に値上げに踏み切ったのが13年のことだ。ロレックスは13年と15年に値上げを実施、14年には消費税がそれまでの5%から8%になったこともあって、購入者にとっては実質的に3年連続で値上がりしたことになる。
その後、19年10月にまたもや10%へ消費税増税、ロレックスはそれに伴って定価も改定した。しかしそれだけにはとどまらず、それからわずか3カ月後の20年1月にも実施している。
そして2年もたたない21年8月に再び値上げ、これについてはスイスフランの高値水準が続いていることによる国内外の価格差を調整するためだったと言われる。加えて22年の1月1日と9月1日に続いて今回と立て続けの値上げとなった。この間の異常ともいえる急激な円安進行を考えれば致し方のないことなのかもしれないが。
ここで16年にモデルチェンジされてから6年が経ったデイトナのRef.116500LNを例に、当時127万4400円だった国内定価がどのように値上がりしたのかを書き出してみると次のとおりである。
2019年10月 130万9000円
2020年1月 138万7100円
2021年8月 145万7500円
2022年1月 160万9300円
2022年9月 172万400円
2023年1月 175万7800円
わずか3年と3カ月の間に6回も値上げを実施、それらを合計すると購入者にとっては48万3400円も支払い額が増えたということになる。同じ商品でこの値上がり幅は本来であれば異常な数字なのだが、ことロレックスに限ってはこの価格では買えないため、こうやって推移を比べてみたところであまりピンとこないというのが正直なところかもしれない。
ちなみに20年前のデイトナSSモデルの国内定価は80万8500円。もちろん旧型と現行という違いがあるため単純に比較できるものではないが、数字だけで見ればいまの定価は当時の倍以上となる。もちろんこれはデイトナに限ったことではなく、サブマリーナーやGMTマスター II などの人気モデルも同様なのだ。
さて、人気モデルの中に今回の定価改定で値上げされなかったモデルが実は存在する。それはヨットマスターダークロジウムとヨットマスター II である。これがどのような意図によるものなのかは正直なところまったく見当もつかない。
最後に気になる実勢価格への影響についてだが、1月7日に更新された「週刊ロレックス相場」(関連記事参照)をみる限りでは、引き続き値下がり傾向が続いているため、今回の改定による動きはいまのところみられない。定価以下で買えた時代ならまだしも、定価でさえ買えない現在の状況なのだからさもありなん。
主要11モデルの1月からの国内新定価は以下のとおり