A.クロノグラフのリスタート操作をより簡略化した複雑機構
通常の時刻表示機能に加えて、ストップウオッチ機能を搭載したのが“クロノグラフ”。
クロノグラフと一口に言っても、多くの時計メーカーでラインナップされているがゆえに、ブランド独自の開発によっていくつか種類がある。
今回はそのうちのひとつ、フライバッククロノグラフについて解説していきたい。
クロノグラフを作動中に再計測をしたい場合は、①ストップ(2時位置のボタン)、②リセットボタン(4時位置のボタン)、そして再び2時位置の③スタートボタンを押してリスタートさせるのが基本的な操作方法だが、フライバッククロノグラフはこの行程における操作を簡略化したものである。
フライバックではクロノグラフが作動中に、4時位置のリセットボタンをダイレクトに押すと、すべての計測針がゼロリセットされると同時に再び自動で計測がスタートする。
このフライバッククロノグラフが生まれた背景には、時計が軍需品として発展してきた歴史がある。
航空機の登場とともに、正確なクロノグラフは自身の飛行位置や目的地への到達時間を測るための機器としてクローズアップされた。しかし操縦中に操縦桿から手を離して何度もプッシュボタンを押すのは難しい。それゆえに操作が簡略となるフライバック機構は当時のクロノグラフウオッチにとって、軍用目的としても画期的なものであったのだ。
このフライバック機構が腕時計用のクロノグラフムーヴメントに初めて搭載されたのが、ロンジンの開発したCal.13ZNと言われている。
写真はフライバック付きの、チュチマフリーガークロノグラフ。軍用クロノグラフの傑作として知られる。ドイツ空軍からの依頼で1940年に開発され、空軍所属のパイロットが使用していた
文◎松本由紀(編集部)
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