A.「Water-proof Wrist Watch」(ウォータープルーフリストウオッチ)の略
以前、同企画Q82で、1940年代の軍用時計でよく見る、12時位置の矢印はなにか?と題して“ブロードアローマーク”についてお届けしたが、今回はブロードアローとともに刻印される“W.W.W.”について取り上げる。
かつて“大英帝国”と呼ばれるほどの超大国だったイギリスにとって、必要とされる軍用時計の数量も各国とは段違いだ。
そのため国内の時計メーカーだけでは到底生産が追いつかず、主にスイスの時計メーカーに製造を依頼し調達していたのである。
そしてそれらにはイギリス政府の所有物の証として、“ブロードアロー”が表示された。
これに加え、第2次世界大戦時には陸・海・空のいずれの軍が管理するものかを明確にした管理コードや、どんな時計なのか、どのメーカーが製造したものなのかなどを示す管理ナンバーを整備。主に裏ブタに管理コードを刻印し、管理・運用していた。
丸で囲っているのがメーカー管理コード、1本線が個体管理ナンバー、2本線が個体シリアルナンバーだ。メーカー別の管理コード詳細は次ページへ
つまり“W.W.W.”は第2次世界大戦の初期、ATPと呼ばれる規格に基づいて製造され1944〜45年頃から支給が開始された軍用時計の管理コードとして用いられたものだ。
この“W.W.W.”とは“Water-proof Wrist Watch”の頭文字で、防水性能を有していることを表している。
“W.W.W.”はレイルウエイトラック、スモールセコンド、ブラック文字盤、防水リューズ、そして防水型の風防を備えていることが必須で、オメガやIWCなどスイスの時計メーカー12社が製造を担っている。
製造数は14万本以上(推定)と、当時の軍用時計としては圧倒的に多かった。
<参考文献>
・今井今朝春『新・軍用時計物語』(グリーンアロー社、1998年)
・ロービート編集部著『LowBeat vol.18』(シーズ・ファクトリー、2020年)
文◎松本由紀(編集部)
【関連リンク】
■【Q82】1940年代の軍用時計でよく見る、12時位置の矢印はなにか?<ミリタリーウオッチ編>
■Q49.1940年代にドイツ空軍で使用されていた時計は、なぜ秒表示が大きいのか【ミリタリーウオッチ編】
■Q50.世界初となる軍用の腕時計はどこのブランドが手掛けたものか【ミリタリーウオッチ編】
■【Q58】30分積算計の目盛りで3本だけが長いのはなぜ?<アンティークウオッチ編>
■【Q95】軍用時計でよく見る“T”の印は何を表している?<ミリタリーウオッチ編>