筆者がこれまでアウトラインで手がけてきた時計についてリストを作ってみたところ、かつて軍用として開発されたパイロット向け航空時計が三つもあることに気がついた。
ここではその3モデルについてあらためて紹介してみたいと思う。ひとつ目はドイツ空軍に採用されていたナビゲーションウオッチ、Bウオッチを再現した“ミリタリータイプ1940”。二つ目はパワーウオッチ創刊20周年記念モデルとしてフライングオフィサーを再現した“パイロットクロノ20thリミテッド”。そして最後が、現在クラウドファンディング「ウオッチメーカーズ」で先行予約を受付中のウォームスウオッチを再現した“セコンドセッティング”である。
ドイツ軍|ミリタリーType1940
■Ref.YK19001-60。SS(38mm径)。5気圧防水。自動巻き(Cal. MIYOTA 8245)。3万9600円
これは1940年代前半の第2次世界大戦時にドイツ空軍で実際に使われていた通称“Bウオッチ”のデザインを再現したものである。当時のBウオッチには2種類あり、これはそのうちのひとつで爆撃機のナビゲーターが使用したものだ。
最大の特徴はインデックスが1から12ではなく5から55までと“秒”表示が大きくデザインされている点である。当時は、爆撃機が空爆を遂行する際に、事前に偵察機によって目標地点を正確に把握する必要があった。ただそれは敵に見つからないように夜間に行われため、暗闇のなかでも秒単位で正確な経過時間と進路を記録しなければならなかった。そのためにあえて秒表示を大きくしたというものだ。
日本製(ミヨタ)の自動巻きムーヴメントを搭載。革ベルトにもリベットが付いたイタリアンヴィンテージ風レザーを合わせることで、航空時計の雰囲気をより強調している。
アメリカ軍|パイロットクロノ20thリミテッド
■Ref.YK20221-3IV。SS(42mm径)。5気圧防水。クォーツ(Cal. VK64)。3万7400円
1940年代にアメリカ陸軍の士官向けに作られたことから“フライングオフィサー”の名前で知られる傑作クロノグラフから着想を得て再現。飛行中に時差を確認するための機能として、1から12までの数字が刻まれた回転ベゼルと世界23の主要都市を示すダイアルインジケーターが設けられたもので、これはパイロットからの要望で開発されたといわれている。
パイロットクロノ20thリミテッドは時差だけでなく、日本の時刻(ホームタイム)を基本として、文字盤に記載されている23のどれかひとつの都市と回転ベゼル上の数字とで、その都市の時刻も同時に表示できるようにしている。つまりGMTウオッチと同様の機能を有して実用性をさらに高めている点が特徴だ
ムーヴメントにはセイコーのメカクォーツクロノグラフ、VK64を採用。クロノグラフの計測針については、機械式のクロノグラフムーヴメントのように滑らかな動きのスイープ運針で、さらに計測停止後にゼロリセットする際も、機械式モデルのように瞬時に帰針する点は、他社製のメカクォーツにはない魅力だ。
イギリス軍|セコンドセッティング
■Ref. YK20222-2BL。SS(38mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal. MIYOTA 9039)。5万5000円
このモデルはアウトラインの最新作である。1929年に航空機のパイロット向けとして経過時間を秒単位での計測を目的にロンジンが開発した歴史的な腕時計、通称“ウィームス・セコンドセッティングウオッチ”をベースに、ロンジン以外にもオメガやルクルト、モバードなども製作し、軍用としてイギリス軍などに納入された1940年代の第2世代を再現したものである。
秒計測用の回転ベゼルと、4時位置には計測時にその回転ベゼルを固定するためのロックボタンを備えている点がこのモデルの大きな特徴。このロック機構はメーカーによって違っていたが、このモデルには40年代のロンジンでイギリス軍に納入された個体の機構に倣い、堅牢に作られたタイプのものを再現している。
自動巻きムーヴメントはミヨタでも薄型の最上位機である9039を搭載する。発売は7月下旬を予定。現在、クラウドファンディング“ウオッチメーカーズ” では最大30%OFFの特別価格で先行予約を受け付け中だ(終了しました)。
8月6日(土)から「ウオッチライフニュース」のONLINEショップで販売開始!