A.磁気に強く、パーツの磨耗も軽減するから
近年、機械式ムーヴメントにシリコーン製パーツを採用するメーカーが増えている。
なぜシリコーンが機械式ムーヴメントのパーツ素材として注目されているのか。結論から言うと、シリコーンは非磁性素材であるため耐磁性能に優れているからだ。
パテック フィリップやユリス・ナルダンといった老舗の高級時計メーカーが率先してシリコーン製パーツを採用していたが、近年ではスウォッチグループに属するティソやミドーといったミドルレンジブランドでもシリコーンが採用されている
シリコーンとはケイ素樹脂のことで、電子機器などが発する磁力の影響を受けない特性をもつ。
これまでは、腕時計に耐磁性能をもたせるためにはインナーケースなどを用いていたが、そのぶんケースに厚みがでてしまっていた。
そこでガンギ車(一定の精度を維持する役割を果たす脱進機のパーツのひとつ)、ヒゲゼンマイ(テンプの中心にあり、髪の毛ほどに細く長いゼンマイ。このテンプが規則的に一定の伸縮運動を繰り返す)といったムーヴメントの要であるパーツそのものをシリコーンにすることで、インナーケースを採用することなく耐磁性が得られるというわけだ。
シリコーンは非磁性素材であるため摩擦が少ないという利点も。とりわけ1時間に数万回もの接触を繰り返す脱進機(ゼンマイからの動力を規則正しい往復運動に変換させるための装置)には打ってつけの素材なのだ。
ただ、その反面で衝撃を受けると壊れてしまうなどもろい一面もあるため修理が難しいというデメリットもある。
ちなみにこのシリコーンを機械式ムーヴメントにいち早く取り入れたのは、ユリス・ナルダンと言われている。同ブランドは2001年のスイス・バーゼルワールドにて、脱進機にシリコーンを用いたフリークコレクションを発表している。
<参考文献>
・シリコーン工業会(https://siaj.jp/ja/index.html)
・ユリス・ナルダン公式HP>シリシウムテクノロジー(https://www.ulysse-nardin.com/jp_jp/silicium)
文◎松本由紀(編集部)
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