前回はサブマリーナーの日付機能のない旧型の14060Mを取り上げたが、今回は見た目にダイバーズウオッチの雰囲気をもつヨットマスターロレジウムに付いて、こちらも旧型に注目してみたい。
まずヨットマスターというコレクションに付いて簡単に触れると、誕生したのは1992年とロレックスの歴史からするとかなり後年になってスポーツ系ロレックスに仲間入りしたコレクションである。名前のとおりヨットオーナーに向けた高級スポーツウオッチをコンセプトに開発された。そのため当初は18金イエローゴールドモデルかゴールドとステンレスのコンビ(ロレゾール)だけで、ステンレススチールモデルはラインナップに無かったため当初日本ではあまり注目されなかったようだ。
1999年初出のヨットマスターロレジウム、Ref.16622。ベゼルだけでなく文字盤にもプラチナ素材が採用されているため、単なるステンレスモデルと違う適度なラグジュアリー感が多くの支持を集めた
そんなヨットマスターが注目されるようになったのが、今回取り上げたヨットマスターロレジウム、Ref.16622が1999年にラインナップに加わってからである。1999年といえばまさに日本での腕時計人気が右肩上がりに上昇していた時期。当然ロレックスのスポーツ系モデルにも注目が集まっていたときだ。
ロレジウムとはロレックス(ROLEX)とステンレススチール(SS)、そしてプラチナ(PLATINUM)を組み合わせて作った造語と言われている。つまり、ケースとブレスレットはステンレススチールだが、ベゼルと文字盤は高級素材のプラチナ製だった。そのため同じシルバー系の色合いということもあって着けていてもステンレスとイエローゴールドとのコンビほどゴールド感がない。それでいてオールステンレススチール製の他のスポーツモデルよりも程よいラグジュアリー感が楽しめるとあって、違いを求めるユーザーに支持されたというわけだ。
プラチナ素材はベゼルだけでなく文字盤にもサンドブラスト処理が施され輝きは抑えられている。また目盛りが隆起した仕様も高い加工技術をもったロレックスならではの仕様で、ヨットマスターの大きな魅力となっている
なお、ベゼルは回転こそするものの逆回転防止機能は付いていないため双方向に回転する。しかも防水性能は通常モデルと同じ100mとダイバーズウオッチの仕様にはなっていない。しかしながら、見た目からダイバーズウオッチと勘違いしている人は意外に多い。
このヨットマスターロレジウムだが、初代のRef.16622は2012年にマイナーチェンジされて2代目のRef.116622となり、ベゼルの機構やブレスなどがブラッシュアップ。加えて新たにブルー文字盤タイプが追加された。そして2016年にもうひとつロジウム文字盤が追加され、プラチナ文字盤はそれと入れ替わるかのように同年に姿を消してしまったのだ。正確な理由はわからないが、製造に手間とコストがかかりすぎるからではないかと言われている。
修理技術者に聞いた。購入にあたっての注意点とは!
ヨットマスターロレジウムは、ロレックスではレイズドと表現しているが、目盛りが隆起したベゼルを、特に硬いプラチナ素材でこの深さを実現できるのはロレックスの高度な技術があってこそと言われているぐらいに最も魅力的な部分でもある。そのため、修理専門のクロノドクターの久保さんによると、ベゼル全体がプラチナで作られており、特にインサートのザラザラとした質感のサウンドブラスト加工は設備がないときれいに仕上げられないため、傷の状態などには特に注意したほうが良いとのこと。
また、文字盤がプラチナのため時計本体部分が重いこともあって、ブレスレットが痛んでいるものが多く見受けられるらしい。この点も購入の際はチェックしたほうがよさそうだ。そして、ステンレスと違い柔らかいためアクセサリーとの重ね着けはNG。久保さん曰くには、修理品のなかにはベゼルがボコボコになっているのもかなり多いとのことである。
さて気になる現在の実勢価格だが初代のRef.16622で120〜140万円。一方の2代目、Ref.116622となると170〜180万円台とかなり上がってしまうようである。ちなみに現行モデルの現在の相場は2月4日更新の「主要11モデルの週刊ロレックス相場」によると249万円だ。ただ、直近の相場を見るとヨットマスターよりもミルガウスの上昇が止まらない点のほうがむしろ気になった。