レクタンギュラーウオッチはなかなか使いこなしが難しく、その愛好家はかなりの時計上級者というイメージがあるが、ドレッシーで落ち着いた風格はやはり格別なものがある。いつかは上質なモデルを1本手に入れたいものだが、そうなると対象となるのはやはりプレムアム感のあるブランドのモデルとなるのではないだろうか。ジャガー・ルクルトのレベルソは、そうした時計ファンの期待に必ず答え得るモデルだ。
レベルソ・トリビュート・スモールセコンド
■Ref.3978430。SS(45.6×27.4mmサイズ)。3気圧防水。手巻き(Cal.822/2)。102万800円
このモデルの誕生は1930年代初めと歴史が長く、その経緯が“ポロの競技中につけていても壊れない時計が欲しい”という要望に応えてのものだったという話は有名だ。競技者同士が馬上で激しくぶつかり合う競技だけに、その衝撃は非常に大きいが、ジャガー・ルクルトではケースを反転させて時計を保護するというアイディアを具現化。さらにケース自体の堅牢化を図ることでこの要望をクリアした。スポーツウオッチの元祖という機能性をもちつつも、時計自体のデザインは30年代という時代を反映してアール・デコの様式を取り入れ、直線を生かしながら官能的な美しさに昇華させている。実用性と優美さをハイレベルで融合させたモデルといえよう。
ケースをスライドして表裏を切り替えることができる
現行のレベルソは、ダイアルデザインのほかケース素材、サイズなど非常に多くのモデルバリエーションを並べているが、今回紹介するレベルソ・トリビュート・スモールセコンドは、とりわけその誕生当時のレベルソを強く意識してデザインされている。ケース自体は45.6×27.4mmとやや小さめ。非常に締まった印象を与えるサイズ感で、エッジのカーブ処理が美しい。ケース厚も8.5mmとかなり薄く、見た目に重苦しい印象はなくフィット感も上々だ。ケースを裏返せる機構を装備していながら、この薄さを実現できるのはジャガー・ルクルトの工作精度の高さゆえだろう。
深みのあるダイアルのトーンもこのブランドならではで美しい。ストラップはアルゼンチン最高峰のブーツメーカー“カーサ・ファリアーノ”とのコラボレーションで、従来のレザーストラップと比べるとしなやかさが格段に違う。ここも装着感の向上に一役買っているポイントだろう。
搭載されているムーヴメントは楕円型の自社製Cal.822/2。言うまでもなくジャガー・ルクルトは優れたムーヴメントのサプライヤーでもあり、かつてはパテック フィリップやIWCなど錚々たるブランドに機械を供給していた実績があるため、その信頼性は抜群だ。現在では自社製造されたムーヴメントは、1000時間以上の検査時間を通過することが製品基準になっている。マニュファクチュールとしての信頼度は非常に高い。
レクタンギュラーケースにスモールセコンドのルックスは非常にドレッシーだが、シンプルで見やすく嫌味のないデザインであるため、年齢を問わずに使いこなせるはずだ。時計自体のルーツを考えれば壊れにくい実用時計という遺伝子はしっかりと息づいており、そこに深みのある渋めの色味を合わせるなど、現代風のアレンジも効いている。時計好きなら一目置く実力派ブランドであり、随所に作りの良さを感じさせるモデルながら、100万円というプライスゾーンは決して高くないと思う。これから長い年月を付き合っていく一生ものの1本としても十分オススメできる時計だ。
【問い合わせ先】
ジャガー・ルクルト TEL.0120-79-1833
https://www.jaeger-lecoultre.com/jp/jp/home-page.html
構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修
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