IWCのビッグ・パイロット・ウォッチといえば、その名が示すとおり航空機の計器を思わせるミリタリーウオッチ直系のダイアルデザインと、大型のケースサイズが売りのモデルだ。しかし、46mmを超えるサイズはさすがに大きすぎて、それだけで敬遠している人も多かったと思う。
2021年にリリースされたビッグ・パイロット・ウォッチ43は、そのケースサイズを43mmにダウン。小型化することで使いさすさを追求したモデルだ。
■Ref.IW329303。SS(43mm径/13.6mm厚)。10気圧防水。自動巻き(Cal.82100)。106万1500円
小型化したとはいえ43mmもあるわけだから、実物を見てみるとやはり大きい。腕に合わせてみても迫力十分で、存在感は際立っている。やはりビッグ・パイロットはこの存在感あってのモデルだ。43mmというサイズは、装着しやすさと時計が放つ存在感の兼ね合いを考えたギリギリのラインなのだろう。ベゼルのエッジを細くして、デザイン的にも大きさを感じさせないような工夫がなされているなど、ディテールにも小技も効いている。このデカさに比して装着感が悪くないのは、IWCのケースデザインゆえだし、ケース径だけでなく厚みも15.5mmから13.6mmになっているので、袖口での納まりも良い。ボリュームがあるぶん堅牢性も高そうで、シースルーバック仕様にして防水性能は10気圧だ。さらに大振りのリューズがデザイン的なアクセントにもなっている。これはパイロットがグローブをはめたままでも操作しやすいということを意識しているのだが、そうした伝統をいまに至っても脈々と受けついでいる点がなんとなく喜ばしい。
文字盤は光沢あるサテン仕上げにラッカーを吹きつけたもので、光の当たり方でブルーのトーンが変わっていくのが美しい。IWCでおなじみのシンプルなアラビア数字インデックスは生真面目な印象で、長く付き合っていても飽きが来なそうだ。もちろん視認性にはまったく問題がない。
搭載されているムーヴメントは、IWC伝統のペラトン式自動巻きの系譜を受け継ぐCal.82100。自動巻き機構にセラミックのパーツを採用することで耐摩耗性を高めたムーヴメントで、巻き上げ効率が高いことでも知られる。シースルーバックからその機構がのぞけるが、ローターがかなり大胆に肉抜きされているので、機械好きの人にはたまらないだろう。パワーリザーブは従来のビッグ・パイロット・ウォッチの168時間(7日間)には及ばないが、本作でも60時間と余裕のあるスペックを誇る。
トータルに見ていくと、やはりサイズダウンして使いやすくなっている点は高く評価できるし、それでいてこのモデルの個性が失われていない点もうまいと思う。質実剛健なパイロットウオッチの系譜を受け継ぎつつ、随所にIWCらしい上品さを感じさせ、ベーシックな3針モデルとしては非常にハイレベルな仕上がりだ。いままでサイズに臆していた人も、店頭でまずはその実物をチェックしてみてはいかがだろうか。
【問い合わせ先】
IWC TEL.0120-05-1868
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構成◎堀内大輔(編集部)/文◎巽 英俊/写真◎笠井 修