LowBEAT magazine @kikuchiのいまどきの時計考

かつて人気を博した90年代の時計たち! 【第3回|カルティエ パシャ オリジナル38mm】

グリッドがあることによって正直時間は見づらくなるが、この独特の雰囲気と存在感はやはり魅力的だ

 2020年新作として復活したメンズラインのパシャ ドゥ カルティエ。かつてカルティエといえばパシャと言うぐらいに人気を博した。もともと防水時計が原型ということから、ラウンド型の防水ケースを採用。独特な意匠をもつリューズカバーを備え、外したときに紛失しないようしっかりと鎖でつながれているなど個性的な仕様で、新たなカルテイェのコレクションとして1986年に誕生した。

 メンズは38mm、35mmの2種類がラインナップ。人気の38mmサイズは目盛りが刻まれた回転ベゼルを装備し、当時はパシャ オリジナル38mmと呼ばれていたため、ここではこの名称を使わせていただく。

グリッドが取り外しできるという点も人気の秘訣。着用シーンに応じて使い分けられる

 そんなパシャ オリジナルのなかで、かつてひと際人気だったモデルがある。それが写真のパシャ オリジナル38mmグリッドである。一部のモデルにはこのように格子状のマスクとも言える“グリッド”が付いていた。しかも、このグリッドは外すこともできるため、着用シーンに応じて使い分けも可能だったのである。

 このグリッドは、1943年に発表されパシャの原型となった防水時計にも風防を保護するために採用されていたといわれるもの。文字盤を覆うため視認性はかなり落ちるが、それ以上に見る者に強烈なインパクトを与えたことは確か。このグリッドが放つ独特の存在感が当時男心をくすぐったというわけだ。

ジラール・ペルゴのCal.3100をベースに改良を加えたCal.191を搭載。ローターと受け板にはびっしりロゴが刻印されている

 搭載する自動巻きムーヴメントはジラール・ペルゴのCal.3100をベースに改良を加えたCal.191である。当時の国内定価は84万円とけっこう高額。それに対して実勢価格は50万円台半ばと割安感はあったのだが、当時40万円代前半だったサブマリーナーデイト、Ref.16610よりも実は高く流通していたのである。2005年に42mmにサイズアップが図られたことに伴って、パシャ オリジナル38mmとともにグリッドモデルも姿を消してしまった。

 現在のユーズド実勢価格は30万円台といったところである。

<パシャ ドゥ カルティエ 38mm(パシャ オリジナル38mm)>
■商品データ
生産終了年:2004年
素材:ステンレススチールケース&ブレス
ケース径:38mm
防水性:100m防水(当時)
駆動方式:自動巻き(Cal.191)
その他:取り外し可能なコンベックス(凸型)グリッド、日付け表示、リューズガード付き
当時の国内定価84万円

菊地 吉正 - KIKUCHI Yoshimasa

時計専門誌「パワーウオッチ」を筆頭に「ロービート」、「タイムギア」などの時計雑誌を次々に生み出す。現在、発行人兼総編集長として刊行数は年間20冊以上にのぼる。また、近年では、業界初の時計専門のクラウドファンディングサイト「WATCH Makers」を開設。さらには、アンティークウオッチのテイストを再現した自身の時計ブランド「OUTLINE(アウトライン)」のクリエイティブディレクターとしてオリジナル時計の企画・監修も手がける。

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