日本未上陸ブランド 話題のトピックス

【懐中時計を腕時計にカスタム!?】アメリカ発の異色ブランド、ヴォルティック・ウォッチ・カンパニーとは

》懐中時計を独自開発したケースによって、腕時計にカスタムする個性派ブランド

 100歳近くまで生きた曽祖父より引き継いだ、1923年頃に製造されたイリノイ・ウォッチ・カンパニーの懐中時計。蓋を開いて長い時間ムーヴメントを眺めていると、曽祖父や父との思い出が蘇る。今回は、そんな古い懐中時計に注目して、懐中時計の新しい活路を見出だす、日本未上陸ながら実に魅力的なアメリカの会社を紹介する。

 VORTIC WATCH COMPANY(ヴォルティック・ウォッチ・カンパニー)は2013年に創業した、カスタムウオッチの製作とレストアを専門とする会社だ。

 ペンシルバニア州立大学の同級生である、R.T.カスターとタイラー・ウルフによって設立され、現在、コロラド州の北部にあるロッキー山脈の麓の町、フォートコリンズを拠点に活動している。 カスターとウルフは、大学教授のアドバイスにより、ペンシルバニア州立大学の3Dプリントラボを使用して自分たちがデザインした時計を製造しており、この体験がブランドの始まりとなったようである。

 1900年代初頭、美しく高品質な懐中時計が何百万個も生産され、これらの時計は所有者に大切にされながら世代から世代へと受け継がれていったが、その一方で、ムーヴメントとケースが別々に販売されてケースだけが販売されていたり、ムーヴメントだけが取り残されて無駄になっている事が意外に多いことに創業者の2人は気付く。

 カスターとウルフは研究と実験を重ねた結果、リバースエンジニアリングを用いて懐中時計のアンティークパーツを再現することにより、懐中時計のムーブメントを収納可能なオリジナルケースの製作を実現。アメリカの“優れたものづくり”を象徴する懐中時計の可能性を広げつつ、持続的に継承していくことができるカスタムウオッチの製作を思いついたのだ。

 古典的な時計製造技術に革新的で現代的な技術を加えた、ヴォルティックの時計。そのスペシャリティウオッチは、その大半がアメリカの自社工場で製造されており、一点物のアンティークの懐中時計をベースにしているという点でも、非常に高い価値を備えている。 

 2020年9月11日、ヴォルティックはハミルトンのアンティーク懐中時計の修復をめぐり、スウォッチグループと争っていたのだが、ヴォルティック側が画期的な勝利を収め、話題となった。

 この米国連邦裁判所の判決では、全ての点においてヴォルティックに有利な判決が下され、アンティークの懐中時計を回収・修復して腕時計にする権利を有していることが明らかになった。※これにハミルトンの商標が付いた時計も含まれる。

 今後のヴォルティックの計画だが、創業者2人の名前を冠した“カスター&ウルフ”というセカンドブランドの立ち上げを計画しているようだ。カスター氏によると、姉妹会社として、低価格の時計を提供することにより、より多くの顧客にアプローチをしたいとのことだ。

 また、アメリカの“スキルトレードギャップ”の解決に貢献するための試みとして、新しい時計人や機械工の育成する非営利団体を設立も計画しているとのことだ。

 ヴォルティックのように情熱に満ち溢れている企業をこれからも応援していきたいと思う。


》ヴォルティックの主要コレクションをチェック

VORTIC WATCH COMPANY(ヴォルティック・ウォッチ・カンパニー)

アメリカン・アーティシャン・シリーズ

スプリングフィールド379

 アンティークの懐中時計のムーヴメント、針、文字盤を使い、ムーヴメントを収納するケースやリューズなどのパーツを製作する。ウェブサイトで公開されている数多くの完成品の中から購入することが可能だ。写真は、1917年製のイリノイ・ウォッチ・カンパニー 、懐中時計を使用したモデル。

■TI(DLC加工/46mm径)。非防水。3400米ドル(約37.5万円)


VORTIC WATCH COMPANY(ヴォルティック・ウォッチ・カンパニー)

レイルロード・エディション

 取り外し可能なベゼルが付いており、レバーを回してリューズを外すことにより時計の時刻を設定することが可能だ。 これはヴィンテージの懐中時計の時刻設定と類似しているが、唯一の違いは、時計の文字盤と針が保護され防水性能が機能するよう、ヴォルティックはベゼルを外してもフロントガラスがそのまま残るよう製造されている。


VORTIC WATCH COMPANY(ヴォルティック・ウォッチ・カンパニー)

コンバート・ユア・ウォッチ

480

 保有するアンティークの懐中時計を、ヴォルティックのオリジナルウオッチに改造することも可能である。 ヴォルティックが検査し、改造が可能であると承認されると、改造費用が決定する。通常、8~12週間で完成するが、持ち込んだ時計の文字盤やムーヴメントを撮影し、オンラインのカスタマイズツール“The Heirloom Watch Builder”にアップロードされる。依頼主はこのツールを使い、ケースの素材、色、ストラップの種類などのデザインオプション選択することが可能だ。一般的な価格体系は、12サイズまたは16サイズの一般的な懐中時計の改造が1,995米ドル(約22万円)、レイルロード・エディションの懐中時計の改造は2,995米ドル(約33万円)となっている。 


》ヴォルティック・ウォッチ・カンパニー公式サイト

https://vorticwatches.com


文◎William Hunnicutt

時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。

https://www.instagram.com/spherebranding/

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