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【国産時計の語れるうんちく】世界に誇る日本の“技術”力-第3回

第3回 – 世界に誇る日本の“技術”力

 調査、技術、歴史の三つの項目に分けて、国産時計にまつわる“うんちく”を紹介する短期連載企画。第3回は時計に隠されたすごい“技術”を紹介する。前回、前々回では、時計の気になるアレコレを“調査”しているため気になった方はチェックしてみてほしい。

 

》ルミノーバは日本のメーカーが開発していた

 いまや多くの時計に採用されている夜光塗料、“ルミノーバ(ルミノバ)”。暗所において時刻を確認するために欠かせない存在となっている。それを開発したのは実は日本メーカー“根本特殊化学”ということを聞き、早速調査した。

 ルミノーバ(ルミノバ)は1993年、根本特殊化学株式会社により開発された。それまでは放射性物質を含む夜光塗料が使われていたため、この開発はとても画期的なものであった。

 現在のシェア率は国内外の高級時計ブランドにおいてほぼ100%。日本のもの作りが世界の時計産業を支えていると思うと、なんとも誇らしい気持ちにもなる。

 これが原料となる蓄光体ブロックで、酸化アルミとストロンチウム等を混ぜて焼いたもの。これを粉末状にしてインクと化し、塗布していくのだ

 ルミノーバといえば、画像のように一般的にはグリーンカラーが採用されているが、最近ではブルーやレッド系統といった多色のラインナップにも取り組んでいるとのこと。

 またベゼルリングなどの曲面への塗布も可能とし、ますます技術が発達している。

 こちらが工場内の作業風景。文字盤や針の塗装や、組み立てを行っている職人たち。世界中の時計に夜光加工をもたらすエキスパートだ。

【問い合わせ先】
根本特殊化学の公式ホームページお問い合わせフォームから

 

》G-SHOCKには東レと共同開発したモデルがある?

 2010年にGW-S5600に初めて東レの製品が採用されて以来、強くて軽い炭素繊維TORAYCA(トレカ)や、複数の微細構造制御技術NANOALLOY(ナノアロイ)を採用した時計を発売。下に東レのカーボン粗材が採用された初期の3モデルを並べた。

左からGW-S5600-1JF(2010年)、GWN-Q1000-1AJF(2016年)、GST-B100XA-1AJF(2017年)

2010年モデル – 耐久力に優れるトレカのカーボンシートを樹脂にインサートすることで強靭なベルトを実現した。■樹脂(46.7×43.2mmサイズ)。20気圧防水。クォーツ。3万3000円

2016年モデル – トレカを採用し、東レと初の共同開発で剛性に優れたカーボンファイバー強化樹脂製ケースを実現。■樹脂(48×57.3mmサイズ)。20気圧防水。クォーツ。11万円

2017年モデル – 最先端素材トレカとナノアロイを樹脂で組み合わせ、耐衝撃性に優れたベゼルを作り上げた。■樹脂×SS(58.1×53.8mmサイズ)。20気圧防水。クォーツ。8万8000円

 

》スイスのトップブランドも認める風防製造の技術

 多くの時計で風防に用いられているサファイアクリスタルは、ダイヤモンドの次に硬いともいわれる人工素材だ。

 そんな時計用サファイアクリスタルの分野において、日本一の生産量を誇るのが“信光社”である。その技術について今回取材を試みた。

種結晶の上に降り積もらせて結晶化する製法を、実際に作業している風景

 スイスのトップブランドから、日本の有名ブランドまで幅広くサファイアクリスタルを納品する信光社が、サファイアクリスタルの製造に着手したのは1970年代のこと。

 それまではムーヴメントの軸受けに用いる人工ルビーを主に製造していたが、いわゆるクォーツショックによる機械式時計の需要の低下を契機に方針を転換。スイスや日本の時計メーカーの需要が高まったことにより、サファイアの製造に取り組むことになった。

 サファイアの育成技術に長けた同社は、ブランドの要望に沿ったサファイアの製造を実現。かつ長期に安定的な供給を行い、多くの信頼が寄せられている。

 信光社ではスイスのトップブランドが指定する“ベルヌーイ製法”にてサファイアを製造している。これは酸化アルミニウムの粉末を酸素と水素の炎の中に少量ずつ落として液化させ、種結晶の上に降り積もらせて結晶化する製法。上の写真は同製法で育成される過程を写したもので、左から種結晶、点火直後、育成1時間後、育成3時間後、完成品となっている。

【問い合わせ先】
信光社
TEL.045-892-4785

 

 日本が誇るものづくりの“技術”を堪能していただけただろうか。次回は知れば知るほど面白い、時計の“歴史”を紹介。

 

構成◎松本由紀(編集部)/文◎Watch LIFE NEWS編集部

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