今回はクラウドファンディングを活用して興味深いビジネスを展開している日本未上陸の時計ブランド、Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)と彼らのビジネスモデルについて紹介
消費者が時計ブランドの株主として新作の開発に参加!?
世界的な感染症の大流行は、私たちのライフスタイルを大きく変えただけでなく、ビジネスのあり方にも影響を与えた。時計業界に関しては、バーゼルワールドのような大型イベントの規模縮小を余儀なくされたため、大手ブランドはターゲットとする消費者へのアプローチをより効果的に行うために、小規模なグループで製品のプライベート・ショーやオンラインで消費者と直接対話するようになった。
このような不安定な時代の変化に対応するために、ブランド側は製品を市場に送り出し、消費者の手に届けるための機知に富んだ方法を模索している。
なかでも影響力を増しているのがクラウドファンディングで、新規ブランドが初期投資を抑えて製品を発表するだけでなく、ブランドや製品に対する消費者の関心をリサーチするプラットフォームとしての役割を果たしている。
今回は、そんなクラウドファンディングを活用して興味深いビジネスを展開している時計ブランド、Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)と彼らの革新的なビジネスモデルについて紹介する。
まずは、Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)についてだが、同社は日本未上陸のスイスブランドである。1934年にレイモン・ドダンによって設立され、47年にイタリアの輸入業者グループに買収されたことでヨーロッパ各国でブランドの存在感を確立。その後、クォーツ危機の影響で72年にブランドが一度消滅している。
復活のきっかけはクリスティーズのオークションだったようだ。出品されていた美しいスイス製のアンティーククロノグラフを目にしたオランダ人で起業家のトム・ヴァン・ウィデリックと妻のエヴェリンは、その時計がLebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)であることを知り、創業家であるドダン家の賛同を得てブランドの再建を目指す。
この復活劇を後押ししたのがクラウドファンディングだ。2015年〜17年までの3年間で、Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)は代表モデルである“アバンギャルド デイト ウォッチ”の第一弾〜第三弾までをクラウドファンディングの最大手、キックスターターでローンチし、いずれも目標を見事に上回る支援を獲得している。
Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)
アバンギャルド デイト ウォッチ
クラウドファンディングサイト、キックスターターで支援金を集めてリリースされた、新生“Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)”の代表コレクション。
■SS(40mm径)。自動巻き(セリタ社製Cal.SW200-1)。1,800ユーロ(約22万3200円)
再スタートを成功させた同社は、さらに斬新なアプローチに挑戦することとなる。それが、出資者にLebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)の株主になる機会を付与するというもの。
2018年、Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)は50万ユーロの資金調達を目標にし、新たにクラウド ファンディング キャンペーン “ Become a shareholder ” を開始。消費者兼投資家は期間限定で同社の株式と一緒に新作モデルである“ベンチュリスト”を購入することができたのだが、このプロジェクトも見事に成功を収めることとなった。
Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)
ヴェントゥリスト
クラウド ファンディング キャンペーン “ Become a shareholder ” でリリースされたクロノメーター認定の高精度自動巻きモデル。支援者はこのモデルとともに株式を購入することができた。
■SS(41mm径)。自動巻き(Cal.LC-201/COSC公認)。2500ユーロ(約31万円)
クラウドファンディングの成功でインターネットを使ったウオッチメイキングの可能性に気が付いた同社は、コレクションを増やすためにさらに革新的な方法を採用している。それが“Lebois & CoLAB.”である。 これは簡単に言えば時計愛好家を対象に、新モデルの開発に参加してもらうというコラボレーション・イニシアチブである。
このプロジェクトは、“ベンチュリスト”の新バリエーション開発のほか、ドダン家のブランドポートフォリオに含まれていた” Airain (1950年代から60年代にかけてフランス陸軍に納入された軍用クロノグラフ)” を復活させるプロジェクトにも活用されており、” Airain ” のファーストモデルは、“Lebois & CoLAB.”プログラム下でリリース予定となっているようだ。
消費者かつ株主は、会社の成長に参画ができ、株主優待で時計を購入でき、そして共同クリエイターとして自分が参画した時計を購入できるというLebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)のビジネスモデル。ほかのブランドがこのアプローチを採用していくかは未知数だが、今後もその動向に注目したいところだ。
Lebois & Co(ルボワ アンド カンパニー)公式サイト:https://www.leboisandco.com
文◎William Hunnicutt