女性編集者がレディースウオッチを実際に見て、感想を交えて紹介する本企画。今回はTiffany & Co.(ティファニー)の横長の文字盤が印象的なイーストウエストを紹介する。
【モデル紹介】
37×22mmと、42×25mmの二つのサイズで展開する人気コレクション“イーストウエスト”。今回は日本人女性の小柄な体型にも合う37×22mmのなかから、“ティファニーブルー”のモデルをセレクトした。
ひと目見たら忘れられない、横向きに文字盤が配されたデザインが特徴のイーストウエスト。なぜ文字盤が横位置なのか。こうしたデザインを採用した背景にはイーストウエストにはモデルとなった時計が存在する。
イーストウエストが着想を得ているのは、トラベルクロックと呼ばれる置き時計だ。1940年代、欧米を中心に広まった旅行ブームの際に必需品とされたトラベルクロックは、目覚まし時計として当時の人々に重宝された。
そもそもこうした旅行ブームが生まれたのは、第二次世界大戦後の世界的な経済発展が影響している。人々が経済的に豊かになったため、これまで富裕層のみの娯楽であった旅行が庶民にまで浸透。列車や航空機での人々の往来が活発になるなか、移動に際しトラベルクロックは欠かせない存在であった。
そんなトラベルクロックにインスパイアされたイーストウエストには、随所にその意匠が施されている。
なんといっても特徴的なのが横向きの文字盤のデザインだ。ケースの形状こそ一般的な時計と変わらないが、文字盤が横長に配置されているため、その見た目はとてもユニーク。
ニューヨークのマンハッタンの長い地形をも感じさせる、横長の文字盤。河川を挟んで島の形状をなしたマンハッタンは、鉄道や船など様々な交通網が生まれ、人々の往来が盛んな街だ。1940年代頃もきっと、行き交う人々のトランクのなかにはトラベルクロックが入れられていたのだろう。
こうした特徴的なケースデザインが採用された本モデルには、デザイン性のみならず機能性もしっかり考慮されている。実機を見て感じたのが、特に時刻を確認しやすいよう工夫されているということだ。
インデックスは、3時と9時のみフォントが大きく配されているのも、そうした視認性を考慮したポイントだ。デザインにアクセントを加えるだけでなく、ひと目見て文字盤の正位置を確認しやすいよう、工夫されている。
またディテールにも注目したい。丸みのインデックスのフォントや直線的なケースデザインには、当時流行したアメリカンアール・デコのデザインを感じさせる。さらにブラックカラーでインデックスに陰影をつけることで、特徴的なフォントのデザインをより際立たせている。アンティークテイストの本モデルだが、最近の時計では見かけないデザインなので、かえって新鮮さや可愛らしさを感じる。
インデックスの塗装は特殊塗料のシルバー プードレを採用。光の当たり具合で細かい粒子状の塗料がキラキラと光る、美しい意匠だった。
こうした美しいデザインをより引き立てるのが、文字盤に施されたティファニーのアイコニックカラーである“ティファニーブルー“だ。このティファニー独自のカラーに憧れを持つ読者も多いのではないだろうか。
実は筆者もティファニーブルーに憧れを持つひとり。グリーンがかった柔らかな色合いのティファニーブルーは、ほかでは見ない上品なカラーで、つい見とれてしまうほどきれいだった。
【着用感は?】
ケースの形状が手首に沿うようにゆるくカーブしている本モデル。そのため横幅37mmと若干大きめなサイズだが、手首を包むように、しっかりとフィットしてくれた。
また着用する前に個人的に気にしていたのが、文字盤の見やすさだ。普段から縦にデザインされた文字盤に慣れているため、着けた時に違和感を感じるのではないかと予想していた。
しかし実際に着けてみると、自分でも驚くほど違和感を覚えなかったどころか、むしろ見やすささえ感じた。
その理由は前述の通り、3時と9時のみ大きく配されたインデックスといえるだろう。腕元を確認する際に大きな目印となり、文字盤の位置を見間違うことなく、時刻の確認ができた。
また腕を前方に伸ばした状態のまま時刻を確認できるので、普段とは時計を見る際の腕の位置が変わるものの、むしろこちらの方が見やすさを感じる人も多いかもしれない。
【推しのポイント】
置き時計にも腕時計にもなるデザイン
実機を見て気付いたのが、本モデルを横のままに立てて置くと、置き時計のようにもなるということ。普段は1日中ずっと着用したままでも平気な筆者でも、その日の体のコンディションにより腕時計を外す時がある。そんな時でもこの時計であれば、ふと机に置いた時に置き時計のように時刻が確認できるのが面白い。
ティファニーらしい洗練されたデザインのなかに、歴史的なインスピレーションや遊び心が盛り込まれたイーストウエスト。
この時計にしかできない腕時計の楽しみ方ができるので、着ければ着けるほどに愛着が生まれそうだ。
文◎佐波優紀(編集部)
【問い合わせ先】
ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
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