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【新作レビュー】SSケースのレアな“カラトラバ・ウィークリー・カレンダー”など、注目モデルが多数! パテック フィリップの2019年新作

 Watch LIFE NEWS編集部・副編集長、佐藤が、今年発表されたパテック フィリップの新作のなかから気になるモデルを発見。実機に触れる機会を得たので、そのレビューをお届けしよう。

 

希少なステンレススチールケースのカラトラバに、
初の“ウィークリー・カレンダー”機能を搭載!


カラトラバ・ウィークリー・カレンダー
■Ref.5212A。SS(40㎜径)。3気圧防水。自動巻き(Cal.26-330 S C J SE)。394万2000円

 

 今年、パテック フィリップは、メンズで10型・10モデル、レディースで5型・9モデルもの新作を発表し、充実のコレクションとなった。いずれも魅力的なモデルではあるが、なかでも、特に注目すべき新作モデルといえば“カラトラバ・ウィークリー・カレンダー”ではないだろうか。

 その名が示す通り、カラトラバ・ウィークリー・カレンダーは、曜日とデイト表示に加え、週番号(ウィークリーナンバー)と呼ばれる週の通し番号を1年の最初から終わりまで連番で振った数字、つまり今日が1年の何週目かを示す“ウィークリー・カレンダー”機能を搭載したモデルとなっている。

 

ミュージアム所蔵のユニークピース“2512”に
インスピレーションを得た独創的ケースフォルム

先端が赤く塗られたハンマー型の指針が、文字盤内周のスケールを指して曜日を表示。そして、同じデザインのもうひとつの指針が、外周の2重のスケール上に設けられた週番号(ウィークリーナンバー)と月名を指して表示する

 

 まずは外装から細かく見ていきたい。カラトラバ・ウィークリー・カレンダーでは、ややクリームがかったシルバー・オパーリン文字盤を採用。さらにブラックポリッシュ仕上げのホワイトゴールド製ドフィーヌ型時分針は、2面にファセット仕上げが施されている。また、ホワイトゴールド製のバトン型インデックスは4面ファセットのブラックポリッシュ仕上げとなっている。

 そして、なんともユニークなのが、この時計のため特別に創作されたという独自の書体を使用したプリントインデックスだ。パテック フィリップのデザイナーが、このモデルのために描き起こした文字と数字をブラックで入念に転写印刷。これらの独創的な手書き風の書体が、カラトラバ・ウィークリー・カレンダーの文字盤に際立つ個性を与えている。

直径40mm、厚さ11.18mmのカラトラバ・スタイルのラウンドケースは、パテック フィリップとしては珍しいステンレススチール仕様。一見、シンプルなスタイルだが、別付けされたベゼル、二段になったカーブしたラグなど、洗練されたディテールを備えている

 

 カラトラバ・ウィークリー・カレンダーが採用するステンレススチールケースは、他のモデル同様、冷間鍛造により成型。パテック フィリップの自社工房で切削加工されたケースは熟練した職人たちの手で、全面に入念なポリッシュ仕上げが施されるが、その複雑な形状により、高度で困難な作業となっている。

 加えて、わずかにふくらみを帯びたボックスシェイプのサファイヤクリスタル風防が、レトロなスタイルを強調。そのケースフォルムは、文字盤の雰囲気と相まって、どことなくレトロな印象だが、実は1955年に製作され、現在パテック フィリップ・ミュージアムが所蔵する46mmの大振りなユニークピース“2512”モデルからインスピレーションを得たものとなっている。
 カラトラバ・ウィークリー・カレンダーでは、このユニークピースのモデル番号と同じ数字の組み合わせを用い、数字の順序を変えることによって、さりげなく、その血縁関係を明示した。

 

なお、スナップオン式のステンレススチールケースバックは、サファイヤクリスタルを通してムーヴメントの動きと精緻な仕上がりを鑑賞することができるシースルーバック仕様となっている

 

カレンダー機能は安全、容易な操作を最優先。
昼夜を問わず、いつでも調整することが可能!

搭載されるウィークリー・カレンダー機能は、ベースムーヴメントに厚さ1.52mm、追加部品数92個で構成された、まったく新しいウィークリー・カレンダーモジュールが開発された

 

 そのユニークなデザインや外装も見どころが多いが、なんといっても注目すべきはムーヴメントだろう。しかも、このために特別に設計、加工された地板(メインプレート)を採用することで、ムーヴメントの厚さは最小限に抑えられ、着け心地に影響がないよう、しっかりと配慮がなされている。

 また、各機能は快適で容易な操作に重点を置いて設計された。曜日表示は、ムーヴメント中央の筒車(時針を動かす歯車)の上に配置された7歯の星車(星形の歯車)が、そして、もうひとつの7歯の星車(日曜日に相当する歯が他の歯よりも長い)が、レバーを介して週番号用の53歯の曜日車を回転させる。
 デイト表示は、各表示の日送りがわずかの間隔を置いて行われる、半瞬時日送り式を採用。これによりエネルギー消費の瞬発的な増大を防いだ。

 なお、曜日と週番号の調整は、それぞれ8時位置、10時位置の調整ボタンで、デイト表示の調整はリューズを一段引き出して行う。しかも、カレンダーの調整は、誤操作や誤動作が発生した際、常に安全側に制御するフェイルセーフの手法で設計されているため、ムーヴメント損傷のリスクなしに、昼夜を問わず、いつでも行うことができる。

 

ちなみに週番号は、一部の国々では日曜日を週のはじめとしているが、パテック フィリップでは国際規格“ISO 8601”に準拠。月曜日を週のはじめとし、1月4日を含む週を第1週と定めた。週番号目盛りが53まであるのは、5~6年ごとに通常(52週)より1週多い年があるため。次回は2020年がこれに相当する。

 

調整不要で、秒針の“振れ”を完全に防ぐ
LIGAプロセスによるアンチ・バックラッシュ歯車

自動巻きのCal.324をベースとする新しいムーヴメントは、直径26.6mm、厚さ3.3mmの機械。キャリバー名にある“26-330”の数字はこれに由来する。

 

 ウィークリー・カレンダーモジュールが新開発なのはもちろんだが、ベースとなるムーヴメントも、このモデルのために新たに開発されたものとなっている。

 この新しい自動巻きムーヴメントにおいて、見るべきポイントは大きく3点。

 ひとつは、LIGAプロセス(X線を用いた精密微細加工技術)によるアンチ・バックラッシュ歯車。パテック フィリップの技術陣は、秒針の振れをなくして摩擦を低減するために、微調整が必要な摩擦バネのついた伝統的な3番車ではなく、代わりに、このLIGAプロセスによるアンチ・バックラッシュ歯車を採用している。
 特許を取得したこの歯車は、ニッケル・リン合金を素材とし、表面が金・銅・イリジウム合金で覆われており、各々の歯が深い溝によって前後に分割され、その中間部に、先端が鈎状となった厚さ22ミクロンの帯バネが形成されている。この独特の形状を持つ歯車の歯自体が、いわば3番車に付いていた抑えバネの役割を果たすというわけである。
 具体的には、この鈎が秒カナ(秒針のついているカナ歯車)の歯を挟むことで、一切調整の必要なしに秒針の振れを完全に防ぐことが可能になった。また、穴石(ルビーの軸受け)の中で回転する秒針のホゾ(軸の先端部)を可動としたことで、さらに摩擦の低減が計られている。

 また、これまで逆に付いていなかったことが不思議なくらいだが、二つ目のポイントはストップセコンド機能が付いたことだ。時刻合わせの際にリューズを引き出すと、瞬時にテンプが一時停止する機能で、時刻合わせを秒単位の精度で行うことができるようになった。

最も目立つ変化は、自動巻ローターの軸の左右に丸い凹みが設けられたことであろう。これは新しいキャリバー26-330 の一目でそれと分かる視覚的特徴となるだろう。しかしこの単方向巻上げ式の自動巻機構には、巻上げ効率と寿命において数多くの本質的改良が加えられている。

 

 そして、三つ目のポイントは自動巻き機構だ。新型ムーヴメントでは、自動巻き機構にも改良が加えられた。

 第1の改良点は、従来の押さえバネのついたクラッチ・レバーに代わり、新しい特許を取得したクラッチ・ホイールが導入された点だ。これは一方向に回転する際にはゼンマイを巻上げ、反対方向に回転する際には空転する。

 さらに第2の改良点。これが重要なポイントで、ゼンマイを手で巻き上げる際、自動巻き機構との連結を解除する減速歯車が導入されたことである。これは、これまで一般的な自動巻き時計が苦手としてきた、リューズの手動によるゼンマイの高速巻上げ時における巻上げ機構への負荷から来るトラブルに配慮したもので、実用性が大きく向上した。

 複雑な機能を持つモデルでありながら、徹底して実用への配慮がなされたカラトラバ・ウィークリー・カレンダー。2019年のパテック フィリップの新作のなかでも、目玉のモデルのひとつといっていいだろう。

 さて、カラトラバ・ウィークリー・カレンダーの解説にずいぶんとボリュームを割いてしまったが、ここからは個人的に気になった2モデルを厳選して紹介したい。

待望のブルー文字盤を採用して、ついに登場!
ノーチラスの新型アニュアルカレンダーモデル

ノーチラス アニュアルカレンダー
■Ref.5726/1A。SS(40.5㎜径。10-4時方向)。12気圧防水。自動巻き(Cal.324 S QA LU 24H/303)。541万800円

 今年のバーゼルワールドに先駆けて、2月に今年生産終了となるモデルが発表されていたが、そのなかにはノーチラスのアニュアルカレンダーモデルのブラック文字盤モデル、シルバー・ホワイト文字盤が含まれていた(ちなみにブラック文字盤の革ベルト仕様であるRef.5726Aは含まれていなかった)。

 もしや、ステンレススチールケースのブレスタイプはもう手に入らなくなるのかと思いきや、新作としてブルー、ブラック・グラデーション文字盤モデルが発表されたのだ。機能的には、これまで製造されていたモデルと同じだが、ブルー、ブラック・グラデーション文字盤といえば、1976年に誕生したノーチラスのオリジナルモデルにも見られたノーチラスらしさを最も感じられるカラーリング。ファンにとっては待望の文字盤といっても良いのではないだろうか。

争奪戦必至の新しいノーチラス アニュアルカレンダー。この機会を逃したら、なかなか見ることは難しいかもしれない、ということで、バーゼルワールドの会場で試着させてもらった。腕に吸い付くようなフィット感はさすが。なんとも魅力的な1本だ

 

クロワゾネ装飾により、世界地図が描かれた
ワールドタイムモデルのイエローゴールド版

ワールドタイム
■Ref.5231J。K18YG(38.5㎜径)。3気圧防水。自動巻き(Cal.240 HU)。867万2400円

 2016年にフルモデルチェンジが行われたワールドタイム。現行の第2世代モデルにあたるRef.5130の丸みを帯びたケースフォルムからシェイプアップし、なめらかなポリッシュ仕上げの細いベゼルとエッジの効いたケースにトラディッショナルなウイングレット(翼状)ラグを持つ第3世代モデルにあたるRef.5230のシリーズに、イエローゴールドケースにクロワゾネダイアルを採用した特別バージョンが発表された。
 センターに描かれる世界地図モチーフはモデルごとに違っており、新作ではヨーロッパ、アフリカ、アメリカ大陸がクロワゾネ七宝装飾で描かれており、すべて手仕上げで精巧に作られている。

 なお、Ref.5230と同様のケースを採用しているが、針は第2世代モデルのRef.5130で採用されていた、特徴的な針を採用している。さらに細かい違いをいえば、文字盤外周の都市名ディスクだ。Ref.5130では、東京(TOKYO)と1時間時差の都市名には香港(HONGKONG)が採用されていたが、北京(BEIJING)に変更されている。この変更は、Ref.5230系のケースを持つモデル共通の特徴である。

ノーチラス アニュアルカレンダー以上に非常に希少なモデルゆえ、今回の取材のタイミング以外ではもはや市場で見ることはできないだろう。そんなわけで、思い出にと、会場で撮影をさせてもらった。この時計の実物を、次に見ることができる機会は訪れるだろうか

 

文◎佐藤杏輔(編集部)

 

【問い合わせ先】
パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター

パテック フィリップ ホームページ:http://www.patek.com

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