かつてロレックスは、そのモデルに様々なペットネームを与えた。
有名なのはバイセロイやエアキング、そしてプリンスだが、なかには穴と言えるモデルもある。そのひとつがロイヤルだ。
少なくとも1930年代半ばにリリースされたロイヤルは、手巻きモデルのペットネームのひとつとして、60年代後半(70年代説もあり)まで存続した。ロイヤルの魅力は、名前にふさわしく、品のあるモデルが多い点。ベーシックなオイスターケースと異なり、40年代から50年代のロレックスらしい造形と、ユニークなデザインを併せもったモデルが多いのだ。
![](https://www.powerwatch.jp/wp496/wp-content/uploads/2025/02/CMID_DSC1317.jpg)
フルアラビアインデックスをもつ、1930年代後半(写真右)と40年代製のロイヤル
【画像:時代によってデザインも変化。ほかのロイヤルの画像を見る】
なおスピードキングは、ロレックスの愛用者だったイギリス人のレーサー、サー・マルコム・キングにちなんだ名前という説が濃厚だが(後にチャック・イェーガーがロレックスを着けて音速を超えた後、エアキングに変更された)、ロイヤルも同様に、イギリス市場向けに命名されたという話がある。
真偽は定かではないが、当時のロレックスがブリテン“王国”という市場を、どこよりも重視していたことは間違いない。事実、ロイヤルがリリースされたといわれる35年、ロレックスはジュネーブとロンドンにのみ、事務所を構えていた。
またロイヤルは一貫して、手巻きムーヴメントしか搭載してこなかった。そのため自動巻きのパーペチュアルに比べてメンテナンスが容易なうえ、ローター芯や自動巻き機構の摩耗などもない。比較的使用頻度の高いロレックスの場合、へたっている個体は多いが、メンテナンスをすれば性能が戻る可能性は高いし、場合によってはジェネリックパーツで修復できなくもない。
ただ純粋に実用性を考えると、おすすめのムーヴメントは、後年のモデルが採用したCal.1210だ。非常に完成された設計をもつため、メンテナンスが容易なうえ、メンテナンスすれば比較的良い精度が得られる。また後継機の1225が1980年代まで作られたため、部品もまだ入手できる。
普通のプレシジョンではなく、ちょっと変わったロレックスが欲しい人にとって、ロイヤルは面白い選択肢のひとつとなるはずだ。しかもいまならば、まだ価格も高くない。