1953年に誕生したロレックス サブマリーナーだが、深海に潜る潜水士のためのプロフェッショナルモデルとして開発された経緯もあって、基本的には質実剛健なステンレススチール仕様中心の展開だった。
ゴールドモデルの投入は、ラグジュアリー路線を模索したロレックスの経営戦略もあったのだろう。GMTマスターは1950年代から金無垢仕様をラインナップしていたが、サブマリーナー初のゴールドモデル登場は1960年半ばとなった。それがRef.1680/8だ。
Ref.1680/8はプラ風防で200m防水、搭載ムーヴメントはクロノメーター仕様のCal.1575という、当時のステンレスモデルと同等のスペック。だが、イエローゴールドの外装はやはり眩くゴージャスだ。ブレスレットは巻きブレスはなく、無垢のハードブレスとジュビリーブレスの2種類が存在する。
Ref.1680/8の最大の特徴は、いわゆるフジツボダイアルを採用していることだろう。インデックスのゴールド部分が大きく、海の岩場に生息するフジツボのように盛り上がった形状は立体感があり、ロレックスマニアの間で人気が高い。80年代まで製造されていたロングセラーだが、金無垢で価格が高かったこともあって、製造量はステンレス仕様よりはるかに少なく、しかも人気のフジツボダイアルとなると、現在の市場ではかなり高額で取り引きされている。
金無垢2世代目のRef.16808は、風防がサファイアクリスタルに更新されて、防水性能も300mにアップ。搭載ムーヴメントは毎時2万8800振動へとハイビート化されたCal.3035である。全体のスペックはかなりハイレベルで、この世代になると現行モデルと同様に安心して使える。ダイアルカラーはブルーとブラックなどが存在するが、ブルーのほうが人気が高い。このRef.16808にもフジツボダイアルは存在し、やはり市場では珍重されている。
1990年頃から2008年まで製造されていた金無垢Ref.16618は、ツインブリッジ化されて動作の安定性が向上したCal.3135をムーヴメントに採用。基本的なデザインはRef.16808を踏襲するが、ブレスレットなどの質感が向上していて高級感がアップしている。この辺の世代となると現行品とほぼ遜色がなく、逆にヴィンテージな味わいはあまり感じられない。
一方で金無垢よりも使いやすいコンビモデルは、1980年代のRef.16803が最初のモデルで、実はかなり登場が遅かった。こちらも初期の個体にはフジツボダイアルが存在する。しかし、コンビモデルはまだそれほど世代を経ていないので、他には際立ったコレクターズアイテムは特に見当たらない。
アンティークロレックスファンに人気が高いのは、やはり金無垢ファーストモデルのRef.1680/8や、セカンドモデルのRef.16808あたりだろう。それ以降のモデルとなると高年次だということもあって、それほど枯れた雰囲気が出ていないのだが、個体によっては文字盤の褪色でいい味が出ているものもあり、これから注目度がアップしていきそうな気配はある。
日焼けした肌にゴールドはよく映えるし、夏向け時計としてゴールドサブマリーナーの需要は高い。金の価値が上がっている現状では、金無垢やコンビモデルの人気もますますアップしていくだろう。