業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回は文字盤中央に設けられた渦巻き状のスケールを取り上げる。
クロノグラフ時計に必ず装備されているのがストップウオッチ機構だ。これはご存じのとおり経過時間を計測するためのものだが、クロノグラフ時計にはそれを記録する積算計のほかにストップウオッチ機能を利用した、様々な計測スケールが表示されている。
その最も一般的なものといえば、現在もほとんどのクロノグラフ時計の文字盤外周やベゼルに表示されているタキメーター(下の写真)である。これは1km移動するのに要した時間を計測し、その区間の平均時速を割り出すためのものだが、この渦巻き状のスケールも実はタキメーターなのだ。
これはカタツムリのような見た目から“スネイルタキメーター(エスカルゴラインとも呼ばれる)”とも呼ばれるもので、1940年代など古めのクロノグラ時計でたまに見かけるスケールだ。
上の写真のデイトナのようにベゼルや文字盤外周に設けられた一般的なタキメーターでは、60km以下の速度を計測できない。そこでタキメーターを文字盤中央に設けることで低速域を表示、時速60km未満の速度も計測できるようにしたのがスネイルタキメーターなのである。
使い方は一般的なタキメーターと同様。計測開始と同時にクロノグラフをスタートさせ、次に1kmの地点でストップさせ、そのときにクロノグラフ秒針の位置にあるスケール上の数字が平均時速となる。この時速60km以下の計測の場合、クロノグラフ秒針が2〜3周するため渦巻き状になっているというわけだ。
まさにクルマのスピードがそれほど速くなかった時代ならではの計測スケールということになる。
[写真上の時計]エベラール。1940年代。手巻き(Cal.16) 。88万 円/PRIVATE EYES Co(プライベートアイズ)
[写真下の時計]ロレックスデイトナ。1975年。Ref.6265。手巻き(Cal.727)。1180万円/JACKROAD(ジャックロード)
文◎LowBEAT編集部
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