いまやロレックスのスポーツモデルでもトップクラスの人気を誇るGMTマスター。しかし、このモデルもちょっと前はエクスプローラーやサブマリーナー、デイトナなどの影に隠れて人気がさほど盛り上がらず、むしろやや地味な存在だった。ここではそのGMTマスターの歴史について触れてみよう。
現行のGMTマスターIIの前身となる初代GMTマスターは、1955年に発表された。航空機による移動が徐々に一般化し、海外を駆け回るビジネスパーソンが台頭し始めた時代だ。ロレックスはパン・アメリカン航空(パンナム)から要請を受け、パイロット用の時計としてGMTマスターを開発したのである。
その名が示すように第2時間帯を表示できるGMT針を搭載。基本的なデザインは当時から現行モデルとほぼ同様で、そのデザインがいかに完成されていたかがわかる。パイロットやジェットセッターから支持を受けた初代モデルのRef.6542は、相当に古いモデルなので、オリジナルコンディションで残っているものは非常に希少だ。特に当時はベゼルが壊れやすいアクリル製だったため、社外製に変えられているものが多い。
1959年頃には2代目のRef.1675が登場。こちらは1980年まで製造が続く超ロングセラーとなったので、市場でも比較的よく見かける。ムーヴメントはCal.1565に更新され、メンテナンス性と信頼性が大幅に向上した。昭和の名優、石原裕次郎が愛用していた時計としてもよく知られる。
その後、80年代にはRef.16750へと進化し、82年にはGMTマスターIIの初代モデルであるRef.16760も登場。しばらくはIとIIが併売されることになる。GMTマスターIIは短針を単独で動かすことも可能になり、GMTウオッチとしての機能性が大幅アップ。89年には2代目GMTマスターIIのRef.16710が登場。同時期にRef.16750はディスコンとなり、GMTマスターはディスコンとなった。
2007年にはセラミックベゼルを搭載したRef.116710LNが発売されたが、この時期からGMTマスターが徐々に注目されるようになった。いままではさほど人気がなかったのに、セラミックのツヤ感やスマートな雰囲気が支持されて、それに伴って古いモデルの注目度もアップ。ゴールドモデルの存在やベゼルカラーのバリエーション、エイジングによる変色などにも注目が集まり、価格相場も高騰した。
特にベゼルのバリエーションは豊富で、一般的にGMTマスターのイメージを象徴する青×赤の“ペプシ”のほか、黒×赤の“コーク”、茶×金の“ルートビア”、パープルの変色が美しい“フクシア”など、様々なカラーが存在。珍しいカラーはベゼルだけでも非常に高額で取り引きされている。時計自体もパーツのオリジナリティによって価格は大きく変わり、オリジナルコンディションの個体だと大きく跳ね上がることは言うまでもない。
次ページでは、ベゼルカラーが魅力的な往年のGMTマスターをご紹介。