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【クロノグラフ時計のインダイアル】三つ目スタイルが主流となった背景には戦争が大きく関係するってホント?

1950年代のホイヤー。三つのインダイアルは、30分積算計(3時位置)、12時間積算計(6時位置)、スモールセコンド(9時位置)となる(写真◎プライベートアイズ)

業界唯一のアンティーク時計の専門誌「ロービート(LowBEAT)」編集部が毎週水曜日にお届けしているアンティーク時計初心者向けの入門記事。今回はクロノグラフ時計のインダイアルについて取り上げる。

インダイアルとは文字盤上に設けられた小さい円の中に目盛りと小針を備えたもので、当初クロノグラフ時計といえばストップウオッチ機能に連動する30分積算計と、もうひとつは秒針の役割となるスモールセコンドの二つを装備した二つ目クロノグラフが一般的だった。

対して現代のクロノグラフ時計というとロレックスのデイトナのように文字盤上にインダイアルを三つ装備した三つ目クロノグラフが一般的となっている。このようにインダイアルの主流が二つから三つに変わった背景にはある歴史的な出来事が大きく関係している。その出来事とはズバリ戦争だ。

以前に書いた「クロノグラフの腕時計化を加速させた戦争、それを牽引したバルジュー社」(関連記事参照)でも触れたように腕時計型のクロノグラフは戦争とともに目覚ましく進化していったといっても過言でない。つまり、いまのようにコンピュータのなかった時代に任務を遂行するには腕時計は重要な道具だったのだ。

1930年代のレマニア。二つのインダイアルは、30分積算計(3時位置)、スモールセコンド(9時位置)となる(写真◎ケアーズ)

ではインダイアルが三つになってどう機能的に変わったのかというと、二つ目は30分積算計とスモールセコンドだったが、そこに三つ目として12時間まで計測できるもうひとつの積算計、つまり12時間積算計が追加されたことで長時間の計測が可能となったのである。

この12時間積算計が初めてクロノグラフ時計に装備されたのは1936年のこと。ただ12時間もの長い時間を稼動させる動力源の問題など技術的には容易なものではなかったため40年代までの多くは二つ目スタイルだった。

そんな12時間積算計の必要性を示したのが第2次世界大戦での爆撃機の存在だ。しかも航続距離がかなり伸びたことから長距離爆撃が可能となり、それに伴って12時間積算計は長時間飛行する爆撃機のパイロットにとっては重要なツールとなったのである。そして50年代から現代に至るまで12時間積算計を装備した三つ目スタイルがクロノグラフ時計の主流となったというわけである。

文◎LowBEAT編集部

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