こだわりを主張できる2大プロダクトである時計とメガネ──。それぞれに愛情を注ぎたいのはもちろんだが、この二つが相思相愛だと洒落感は倍増しになる。そこでお送りする、メガネと時計のベスト相性を探る“男の自己満コーディネイト”連載。
撮影の舞台は、昼はメガネ店&喫茶、夜はクラフトレモンサワーBARとなる御徒町の知る人ぞ知る名店“ルッテン_”。アナタにぴったりの眼鏡と時計、ついでにレモンサワーやいかに!?
合わせを選ばないのに“グレー”ならどこか新鮮
セルフレームのメガネの定番色というと、黒か茶のべっ甲あたりがまず思い浮かぶだろう。メタルフレームならば、シルバーかゴールド。時計ケースもシルバーかゴールドだし、時計ベルトは黒か茶が定番に挙がる。
時計とメガネの相性学としては、基本的にこれらのどこかをリンクさせるとまとまりがよい。連載Vol.2では、そんな基本を踏襲しながら、イレギュラーな“グレー”をリンクさせて鮮度を上げる自己満コーディネイトを提案したい。
無彩色であるグレーは、様々なイメージを想起させる色だ。アーバンな、モダンな、落ち着いた、気品に満ちたetc. 初老のダンディを指して“ロマンスグレー”なんて言ったりもする。ことファッションにおいては色合わせを選ばない万能色としても重宝され、これは時計とメガネにもそのまま当てはまる。
ネイビーのセットアップを着ていようと、ジョン・レノンよろしく軍放出品のジャケットを羽織っていようと、白洲次郎のような白Tシャツにジーンズ姿でも、何にでも似合ってしまう。そして件の、アーバンな、モダンな……印象が手に入るのだから、もっと積極的にグレーに頼るべきと、こう思うのだ。
***変化球なグレーの時計***
今回セレクトした時計は、“オメガスウォッチ”の愛称で親しまれるオメガ×スウォッチ“BIOCERAMIC MOONSWATCH”より“MISSION TO MERCURY”のクロノグラフ。水星といえば“すいきんちかもく”の先鋒とあって、太陽に最も近い位置にある太陽系惑星であり、占星術では“知性”を表す星座というのは余談である。“セーラーマーキュリー”のIQが300ということは、もっと余談である。
マットグレーのケースは、堅牢かつ風合いのよいバイオセラミック製。ケース径は42mmとクラシックな時計からするとやや大ぶりだが、Velcroストラップとナチュラルなテクスチャーが相まって、軽やかに手に馴染む。デザインベースは、人類初の月面着陸を支えた不動の名品“スピードマスター”。まさしくアーバンな、モダンな印象が滲むベストチョイスといえよう。
OMEGA×SWATCH(オメガ×スウォッチ)
バイオセラミック ムーンスウォッチ
宇宙探査に活躍した“スピードマスター”をベースに太陽系の天体にちなんだカラーリングに仕上げた、売り切れ御免の人気コラボシリーズ。本作はマーキュリー=水星をテーマに、静かなるグレーがフィーチャーされている。
ケース素材は、3分の2がセラミック粉末、3分の1がヒマシ油を原料にしたバイオセラミック。細かな凹凸感のあるテクスチャーで、肌当たりも心地よい。ちなみにアワーマーカーはスーパールミノバ仕様。月の出ていない夜でも、視認性は申し分ない。
***変化球なグレーのメガネ***
一方のメガネは、日本有数のアイウェアデザイナー、榎本郁也氏が手掛ける”アイ.エノモト”へ”ルッテン_”が別注した、グレーのチタンフレームをセレクト。コンクリートを思わせるマットなテクスチャーは、細かなガーネットの粒を高圧で吹き付けることで表現したもの。丸みのあるシェイプとマットな表情が相まって、メタルフレームでありながらどこか優しげな雰囲気なのも、このメガネのチャームポイントである。
さて、先にもグレーは様々なイメージを想起させる色だと述べたが、文面とはまた違った魅力を感じ取ったという方も多いかと思う。それもまた、無彩色グレーの魅力。どうぞステレオタイプに縛られず、アナタ色に染めてグレーを楽しんでいただきたい。
I.ENOMOTO for RUTTEN_(アイ.エノモト フォー ルッテン_)
ウルトラマット サーフェス
チタンフレームでありながら固い印象のない、オーバルシェイプの一本。リムのエッジにも丸みが設けられていて、これが優しいテイストへと繋がっている。ルッテン_の別注によって“ウルトラマットグレー”に彩られたこちらは、ガーネットの粒の吹きつけ加工によるマットな風合いも見どころ。クリアカラーのモダン(耳当て)が、グレーのもつ都会的な印象にマッチしている。鯖江製。
【問い合わせ先】
眼鏡とクラフト at RUTTEN_
TEL.03-6284-2675
Column:変化球グレーの時計とメガネな日に飲みたいお酒は?
銭湯帰りのレモンサワー
街中を軽快な足取りでゆくイメージに合わせてチョイス。ウィスキーに浅煎りのエチオピア豆を漬け込んで作ったコーヒーリキュールに、自家製レモネードシロップ、そこに「よーぐると和マッコリ」を合わせてつくる“銭湯帰りのレモンサワー”は、まさに銭湯帰りに飲んだコーヒー牛乳や乳飲料を思わせる懐かしいお味。甘みの中にほのかに感じる酸味がクセになる! ゥンまああ〜い! 750円。
***眼鏡とレモンサワーの詳細はこちら***
洒落者が集う青山のアイウェア名店“ブリンク ベース”を運営する荒岡 敬さんが、地元御徒町に開店したマルチスタイルショップ。12:00〜19:30の昼の部では、カフェ営業を行いながらアイウェアや民藝、郷土玩具を販売し、19:30〜21:30までの夜の部(*金・土のみ)では、33種類のクラフトレモンサワーが飲めるBARに変身する。料理も美味しい!
眼鏡とクラフト at RUTTEN_
住所:東京都台東区上野5-5-10 1F
定休日:毎週月曜日、第3水曜日
TEL.03-6284-2675
https://www.rutten-eyewear.com/
文◎秦 大輔
1980年生まれ。大学卒業後に編集・ライターとしてのキャリアをスタートし、ファッション誌、モノ雑誌を中心に、ウェブメディアでも原稿を執筆。時計についてはタイメックスを愛用しており、2021年に発行された『TIMEX PERFECT BOOK』でも執筆を担当している。
構成◎船平卓馬(編集部)/写真◎山本れお