時計ブランドにムーヴメントを供給する専業メーカーは“エボーシュ”と呼ばれる。アンティークウオッチにはエボーシュ製のムーヴメントを搭載した個体が多いが、特にパーツ数が多く、高い製造技術が求められるクロノグラフとなるとそれが顕著だった。クロノグラフのエボーシュメーカーではレマニア、ヴィーナス、ランデロンなどが知られているが、なかでも人気が高いのがバルジューだ。
バルジューのムーヴメントは設計のバランスが良く、機能性・耐久性にも優れていた。リセットハンマーなどはやや細めのデザインだが、それで壊れやすいということもない。バルジューは第1次世界大戦期の1914年に、初の腕時計用クロノグラフCal.22を開発。ストップウオッチという作戦遂行には欠かせない機構をもった腕時計は、軍用として需要が一気に高まった。現存する当時のバルジュー搭載機も、ミリタリーウオッチが多く見受けられる。
また当時バルジューは、ロレックスやパテック フィリップといったメジャーブランドだけでなく、マイナーブランドにもムーヴメントを供給していた。こうしたマイナーブランドのクロノグラフは、性能は遜色ないながらも価格は手頃なことが多く、おすすめだ。
次ページでは、バルジュー製ムーヴメントを搭載したクロノグラフモデルをご紹介。