あまりにもコスモグラフ デイトナ(以降デイトナ)の存在が大きすぎるため、どうしても忘れてしまいがちだがロレックスにはヨットマスター II という優れたクロノグラフ機能を持つ時計がもうひとつ存在する。今回はこのヨットマスター II について取り上げる。
1963年にデイトナが誕生してから40年以上もの間、クロノグラフ時計といえばデイトナだけだった。おそらくは長年にわたって他社製のクロノグラフムーヴメントを使用していたことが大きく関係しているのだろう。そんなロレックスが完全自社製の自動巻きクロノグラフムーヴメント、Cal.4130を完成させ、それを搭載したデイトナをリリースしたのは2000年のこと。デイトナ誕生から実に37年後だ。
ロレックスはこれを機にCal.4130をベースに新型自動巻きクロノグラフムーヴメント、Cal.4160を開発。これを搭載したデイトナとは別の新たなクロノグラフ時計を2007年に登場させた。それがヨットマスター II というわけである。つまり、07年以降からは2種類のクロノグラフ時計がラインナップされることになる。
このヨットマスター II 、なかなかのスグレモノでデイトナのように経過時間を計測する単なるクロノグラフではない。機械式では最も実践向きとされる高度なレガッタ・クロノグラフ機能を備えたハイエンドなラグジュアリースポーツとして開発された。
つまり、最大10分間のカウントダウン機能を備えているというのが最大のポイントで、その設定方法がこれまたかなり特殊だったのである。この操作方法については最後に紹介するとして、こんな素晴らしい機能を備えたモデルにも関わらず、残念ながら2023年で生産終了になってしまった。
生産終了時点での国内定価は263万6700円。対して新品実勢価格は300万円台前半とデイトナに比べれば価格的にはかなりお買い得。ただ、44mmの大振りなケースでかなり重い、加えてご覧のようにカッコイイのだが実際に着けるとかなり目立つため使用シーンは限られる。つまり先週の記事で書いたシードゥエラーと同様に、購入ユーザーがどうしても限定されてしまうことは否めない。そのためセールス的にも振るわなかったのかもしれないが、これだけの技術を投入して開発したものを生産終了してしまうというのもすごい話だ。
さて、ここに掲載したヨットマスター II はステンレスモデルのRef.116680。これがラインナップに追加されたのは初出から6年後の2013年。カウントダウン機能が改良されたCal.4161が搭載された。
加えて17年にはマイナーチェンジされ、時針がそれまでのバトン針から写真のようなベンツ針になるなどディテールに仕様変更が施されている。そのため中古市場では前期と後期に分けられている。現在の中古価格は200万円台半ばから300万円台半ばといったところで前期型の方が年式的にも安めで流通しているようだ。
ヨットマスター II は、確かに一般向けではないかもしれないが、機能的にもデザイン的にみても独創性に富んでいるため、余裕があれば所有しておきたくなる、そんな魅力を秘めたモデルと言えるだろう。
【画像】ヨットマスター II の前期・後期の違いを写真でチェック!
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