防水性能や回転ベゼル、頑丈なケースといったスペックとデザインで人気を誇るダイバーズウオッチ。ダイビングをはじめとするマリンスポーツをする人に限らず、○○m防水という言葉は、時計好きなら思わずチェックしてしまうポイントだろう。
さて、今回は○○m防水のなかでも現在のところ最大クラスとされる5000mの防水性能をもつダイバーズウオッチについて紹介したい。
最強ダイバーズウオッチ、ジン“U50.HYDROシリーズ”
今回最強ダイバーズとして紹介するのは、5000m防水性能を備えるジンの“U50.HYDRO”。1961年に創業されて以来、視認性を重要視した“使うためだけの時計”を開発してきたジンが、高防水ダイバーズとして2005年に誕生したUシリーズの上位モデルだ。
1996年に発売したモデルで採用した“ハイドロ・システム”を進化させた本モデルは、ケース内のムーヴメント、文字盤、針を透明度の高い液体に浸けることで、耐圧性能を高めると同時に水中での鏡面反射を起こさない構造になっている。ダイバーズウオッチにとって重要な“あらゆる角度から時計を読める”ことを実現しているのだ。
【画像】防水性能なしでもかっこいい!グレーシリコンストラップなど別カラー
また、5000m防水性能は、特殊オイルを充填させていることや、ドイツ製Uボート・スチールを採用した頑丈なケースとリューズによって成り立っている。さらに、材質の表面を硬化させるテギメント・テクノロジーも用いることで外部からの傷も防止している。
深度5000mの水圧ってどんなもの?
ダイビングで通常潜水できる範囲はライセンス取得者で水深39m程度が一般的とされている。最大でも水深56mが酸素中毒のラインとされているため、多くのダイバーズウオッチに採用されている300m防水があれば十分というところ。
ここで、そもそも深度5000mとはどのようなレベルなのか想像もつかないといった声も聞こえてきそうだ。
耐圧の例えとして筆者が思わず笑ってしまったのは、水深5000mでかかる水圧は、指一本に馬1頭を乗せた圧力に匹敵するレベルだということ。水圧は10m潜るごとに1気圧増えていき、深度5000mでは約500気圧、1平方センチメートルに約500kgの力がかかるのだ。つまり、水深5000mの世界では指先に馬1頭分を乗せるほどの圧力がかかってくることとなる。
ジンの“U50.HYDROシリーズ”のケースは直径41mmな
水深5000mの世界
水深200mより深い海は深海と呼ばれ、届く太陽光は水深200m時点で海面の0.1%程度となる。水深1000mから先は暗闇の世界が広がっている。ちなみに、水深200~1000mをトワイライトゾーンまたは中深層とも呼び水深1000~4000mを漸深層と呼ぶ。
潜水が得意なクジラとして有名なマッコウクジラは水深2000mから3000mまで潜ることができるといわれている。ダイビング中にマッコウクジラに遭遇し、もしうっかり潜水に連れていかれたとしても、時計は無事だ。そこからさらに深く潜っていくと水深3800mでタイタニック号が
さらに、最強ダイバーズウオッチが耐えうる水深5000mとなると、深海帯と呼ばれ、低温(ほぼ氷点下)・極圧という極限の環境。光はもちろん、まったく届かない。
一般的なダイビングでは56mが限界ラインとされていると述べたが、テクニカルダイビングでは100m以上の深さまで可能とされており、過去の最高記録は332.35m。潜降が14分、浮上には13時間以上かけたダイビングで、使ったタンクはなんと93本(サポートダイバー分も含め)だったという。
こう考えると、水深5000mは本当に、本当に深い海の中なのだと感じる。
オーバースペックでもOK!ダイバーズウオッチはとりあえずかっこいい!
今回は最強のダイバーズウオッチがどれほど最強なのか?を考察してきた。奥が(底が?)深すぎる海の世界、深度5000mは私たちにとっては少し縁遠い話かもしれない。
5000m防水性能が日常生活において必要かと問われると、実際のところまったく必要はない。しかし、500気圧防水なんて聞くと“え、すごい!”と単純に興味を引かれるし、“水深5000mってどのくらいの水圧なの?”とか疑問もわいてくる。時計好きの冒険心をくすぐるのにうってつけのスペックではないだろうか。
ハイスペックダイバーズウオッチで、深海の世界を想像してみるのも楽しいかもしれない。
【画像】馬13頭が乗れる⁉ 5000m防水性能のダイバーズウオッチ
文◎トレンドライター ゆい