先日のこと、自動車関係の出版社の方とクルマの中古の話から時計の話題になって、「そもそもロレックスがこんなふうにプレミアム価格でしか買えなくなったのはいつからなのか」と聞かれ、ふと答えに詰まってしまった。そういえばいつ頃からだったのかと。
新型コロナウイルスのパンデミックに翻弄されてロレックスの相場も異常な状況だったこともあって感覚的にも麻痺してきている。そこで数年前にも一度取り上げているが、そのときの記事を元に一番わかりやすいサブマリーナーデイトのこれまでの価格推移を例に振り返ってみた。
まず、掲載したグラフをご覧いただきたい。当ウオッチライフニュースで毎週更新している「週刊ロレックス相場」の過去のデータ(現在は現行モデルのデータに移行)をグラフ化したものである。時計は2010年〜19年まで生産された旧型サブマリーナーデイトのRef.116610LN。グラフは2011年からコロナウィルス禍真っ只中だった20年5月までの実勢価格の推移だ。
Ref.116610LNがリリースされた頃の税込み国内定価は73万5000円。それに対して当時の実勢価格は50万円台後半(グラフの位置A)と並行輸入品ならではのメリットはまだあった。ただその後右肩上がりで上昇。ちょうど円安が進行し、対してスイスフランと米ドル高に急激に動いていた時期である。もちろんそれに伴って国内定価も2014年と19年の消費税増税を含めると9年間に4回上がり19年には89万8200円となった。
「サブマリーナーデイト、歴代3世代にわたる17年間の国内定価と実勢価格の推移」
そして定価を超えるようになったのはちょうど消費税も5%から8%に増税された2014年頃。グラフでは15年頃(B)をピークに一旦値下がりに転じているがここでも国内定価を下回ることはもうなかった。
そんな相場上昇に異変が起きたのは17年の夏頃(C)である。日本に並行輸入で入ってくるロレックスの新品が極端に減ったのだ。中国市場を重要視したためではないかなど、原因についてはいろいろと言われていたが、どれも確証はない。
加えて、ロレックス自体も日本と海外との内外価格差を少なくするよう海外の定価を調整するなど動きを強めたのもこのぐらいの時期だったと言われる。
そして1度目のピークは19年5月頃(D)に起こる。いわゆるインバウンド需要により、サブマリーナーデイトの実勢価格もそれまでの頂点(140万円台)を迎えた。しかし、急激に上がりすぎたための揺り戻しのようにそれ以降7月から9月にかけて急激に下落(E)。10月頃(E)にまた上昇するなど当時日本人にとってはかなり買いにくい状況となっていた。そして20年2月をピーク(F)に一転急降下。新型コロナウイルスの影響である。
ただこれも束の間で、グラフにはないが5月を境に実勢価格はまたもや急上昇。ロレックスの工場閉鎖などの影響からさらに流通量が激減し世界的に高騰する。投資物件としての新たなニーズが加速するなど、コロナ禍によってまったく別の市場となってしまったというわけである。最近のように錯覚してしまうのはこの影響が大きい。実際には10年も前からだったのだ。
そして現在の相場はいくらかというと次ページの「月間ロレックス相場」を見ると236万円。コロナ禍以降の4年間で約80万円も上がった。ただ、同時に国内定価も148万1700円と4年前から51万5900円も値上がりしている。実勢価格ばかり注目されてしまうが、定価で見てもかなり異常な状況だということがわかるだろう。