左からロレックス GMTマスター(Ref.16750、きれいに褪色した赤青ベゼルでオマーンのカブース国王の銘が入った中東モデル)、エアキング(14K無垢でこれも中東モデル)、GMTマスター(Ref. 1675の初期型で黒ベゼルの全赤針)、デイトナ(Ref.16520の珍しいアイボリーダイアル)、オメガ シーマスター デヴィル クロノグラフ(70年代製で中井貴一さんからいただいたもの)。いずれも相当なレアモデルばかりだ
様々な時計好き著名人が登場してきたこのコーナーだが、木下さんのマニア度は群を抜いている。コレクションの多くはスポーツロレックス、しかもアンティークのレアものばかりという黒帯級だ。
「父親が趣味人で、子供のころからシチズンなどを買ってくれたんですよ。自分で最初に買った時計はタグ・ホイヤー。確か8万円くらいだったかな。ロレックスはエクスプローラーⅡ(Ref.16570)が最初でした。木村拓哉さんがドラマで着けていたエクスプローラーⅠが大人気だった時代ですが、自分はちょっと差別化するためにⅡの白文字盤を買ったんです。そこからいろいろ調べていくうちに、徐々に4桁型番のスポーツモデルにのめり込んでいきました。いまは現行モデルにはほとんど興味がなくて、アンティーク専門ですね」
今回持って来ていただいたのはスポーツロレックスが中心。しかもマニアックなディテールが存在するレアアイテムばかり。そのコレクションの価値は非常に高い。
「このデイトナのアイボリーダイアルも珍しいでしょ。エクスプローラーⅡのアイボリーは有名ですが、デイトナのRef.16520にもこういう変色があって、最近になって注目されていますね。あと金無垢のエアキングも気に入っています。若いころは抵抗感があったけど、この歳になると金無垢もそれなりに格好がつきますしね。時計雑誌は必ず目を通すし、時間があればショップも頻繁にのぞきます。SNSで知り合った時計仲間もいて、いろいろ教わったりコレクションを見せ合ったりしています。ただ昔の価格を知っていると、いまのスポーツロレックスの高騰ぶりはちょっとすごいなと思いますよ。レアモデルでもかつてはもっと安く売っていたのを知っているから、あのとき買っておけばなんて後悔することもよくあります。だから新しい時計を手に入れるときは、古い時計を何本か手放して資金を調達することが多くなりましたね。そうやって徐々に濃いコレクションになっていったと思います」
ドラマなどの小道具は用意されたものではなく、役柄を考えて自前の時計を用意するというこだわりもある。
「わりとこだわっているんですけど、残念ながら時計が大きく扱われることがないんです。1回だけ時計がアップになったことがあって、あれはうれしかったな(笑)。自分がドラマで使っていた時計が人気を集めて、“木下モデル”なんて言われるようになると最高なんですけどね」
HOUKA KINOSHITA 1964年1月24日、大阪府生まれ。80年に映画“ガキ帝国”で俳優デビューし、その後吉本新喜劇に入団。退団後は強い個性と演技力でドラマや映画、舞台のバイプレーヤーとして人気を集め、映画プロデューサーとしても活動している。近年の代表作はドラマ“昼顔”“ラブソング”“ドクターカー”“ナイトヒーロー”“水族館ガール”、映画“グレイトフルデッド”など。