アンティークはもちろん、ポストヴィンテージ、さらには通常であればユーズド扱いになる現行の旧モデルまでがプレミアム価格で取引され、世界的なマーケットを形成しているロレックス。近年は新興富裕層の増加や流通量の減少によりその市場価値がさらに高騰しており、一部のスポーツモデルについてはオークションやコレクターの間でパテック フィリップに匹敵する価値を確かにしている。
まさに別格の存在といえるが、実はもうひとつポストヴィンテージのジャンルで世界的なマーケットを形成しているブランドがある。それが、ロレックスのディフュージョンブランドとして誕生したチューダーだ。
このディフュージョンブランドとは、本家ブランドの魅力や特徴は生かしつつ、販売価格を抑えて販路の拡大と知名度の向上を目的とした普及版ブランドのこと。主にアメリカ市場での販路拡大を目的にして創設され、チューダー以外にもロンジンの普及版であるウィットナー、ブライトリングの普及版であるワックマンなどが1930年代〜60年代にかけて誕生している。
今回紹介するのは、そんなチューダーのブランドアイデンティティを体現するモデルのひとつであるサブマリーナーの第3世代“青サブ”モデルだ。
TUDOR(チューダー)
222サブマリーナー
ロレックスの人気が高まった1980年代に登場したRef.79090。本家ロレックスのサブマリーナーからディテールを継承しつつ、ベゼルは両方向回転で、チューダーだけのブルーのカラーリングを採用。フリップロック式の純正3連巻きブレスに加え、リューズと裏ブタには本家ロレックスと共有のクラウンマークを刻印したパーツを採用している。
本家ロレックスのサブマリーナーと同じ54年に発表された第1世代(54年から68年まで製造)、日本のファンから“イカサブ”の名で親しまれるスノーフレークダイアルなどが登場した第2世代(69年から88年まで製造)を経て、89年から製造が開始され、独自性を強調した第2世代に対して原点回帰ともとれるデザインを採用しているのが特徴。
ベンツ針を備えた文字盤は本家のサブマリーナーに近い雰囲気を感じさせるが、それでいて、淡いブルーの色使い、12時位置の盾ロゴ、6時位置と9時位置に配された三角形のアワーマーカーなど、ロレックスには存在しない意匠を採用している点が魅力を高めている。
95年にチューダー版サブマリーナー最終レファレンスであるRef.79190が登場したことで生産終了となるが、第4世代はフチありのインデックスに仕様変更されるため、経年変化したトリチウム夜光のフチなしインデックスを備えた第3世代が根強い人気を獲得している。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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