1990年代の機械式時計復権の土台を作ったブランパン。質の高い作りとロングパワーリザーブが特徴のスタンダードコレクション、2000シリーズをクローズアップしよう。
現行の実用性と、ヴィンテージに通じるコレクター性を兼ねそなえた1980年代から90年代のポストヴィンテージモデル。現行とは異なるサイズ感、デザインに加え、オートメーション化が徹底された現行モデルに比べて、ディテールの作りに手作りの質感を残しているのもその魅力といえる。今回紹介するブランパンの2000シリーズニュークラシックも、文字盤やケースのディテールにそんな手作りの美点を見いだすことができるポストヴィンテージモデルのひとつだ。
ブランパンは1735年、スイスの時計師ジャン・ジャック・ブランパンが創業したスイスを代表する名門ブランドのひとつ。数ある時計ブランドのなかでも世界最古といわれるブランドなのだが、1970年代のクォーツショックの際、市況の影響と創業家の断絶による壊滅的な打撃を受けて1970年に倒産。81年にジャン・クロード・ビバー(現ウブロCEO)、ムーヴメントメーカーのフレデリック・ピゲの社長ジャック・ピゲの主導のもとでSSIH(後のスウォッチ グループ)が買収したことで81年に復活を遂げる。
その後は、84年から89年にかけて、シックスマスターピースと呼ばれるコレクションを発表。ウルトラスリム、ムーンフェイズ、パーペチュアルカレンダー、スプリットセコンドクロノグラフ、トゥールビヨン、ミニッツリピーターと、毎年1モデルずつ時計を製作し、91年にはこの6モデルの機能をひとつの時計に収めたグランドコンプリケーションを集大成として発表。機械式時計の工芸品的価値を市場に再提案する立役者となった。
BLANCPAIN(ブランパン)
2000シリーズニュークラシック
90年代のブランパンを代表するスタンダードコレクション。植字されたブレゲ数字のアプライドインデックス、鋭角にシェイプされた時分針など、職人が手工芸的な方法で仕上げたパーツに高級時計らしい質感が宿る。伝統的な作りを継承する一方で、スモールセコンドとパワーリザーブインジケーターを重ねたモダンな意匠を違和感なく取り入れている点も特徴のひとつ。ムーヴメントは100時間パワーリザーブを誇るフレデリック・ピゲ製のCal.1106を搭載しており、クラシックとモダン、美観と機能性を両立した、90年代の隠れた秀作といえるだろう。
2000シリーズニュークラシックは、そんなブランパンが、より幅広いユーザーの獲得を目指して製作した当時の定番コレクション。90年代以降に興る機械式時計復権の土台を作ったポストヴィンテージ世代を象徴するモデルのひとつだ。
シックスマスターピースで提示してみせた伝統的な機械式時計の美意識を継承しており、36mmのラウンドケースには気品のある二層ベゼルを備える。手作業で仕上げられたインデックス、針が文字盤に立体感を加え、復活を遂げた名門らしい程よい高級感を醸し出している。
さらに、美観のみならず、ムーヴメントは高級ムーヴメントで知られるフレデリック・ピゲ製のCal・1106を搭載。現在、高級時計の世界で主流となっているロングパワーリザーブを先取りする100時間パワーリザーブを備え、実用性が高められているのもこのシリーズの特徴だ。
インパクトや知名度はやや低いモデルではあるが、完成度の高さはポストヴィンテージのモデルでも随一。小振りで均整の取れたデザイン、インデックスや針の質感、実用性の高いムーヴメントと三拍子揃った秀作といえるだろう。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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