機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。
この時代の時計には単なる“中古時計”という評価の枠では収まりきらない、アイコニックな意匠を備えた名作を見つけることができる。今回は、シリュビル クロノグラフとともに、90年代に人気を博したジラール・ペルゴの代表モデル“ヴィンテージ1960”。その魅力を解説していこう。
1980年代後半から90年代に世界を席巻した機械式時計復興ブームのなかで、古典的でありつつ個性を備えたトノーケースで人気を博したジラール・ペルゴのリシュビル クロノグラフ(93年初出)。今回、注目したのはその後継機としていえる“ヴィンテージ1960”だ。
GIRARD-PERREGAUX(ジラール・ペルゴ)
ヴィンテージ1960
スポーツモデルに対するニーズの高まりを受けて、98年にリリースされたポストヴィンテージのジラール・ペルゴを代表するモデルのひとつ。軍用パイロットウオッチを思わせる文字盤のデザイン、ケースを採用しつつ、丁寧に研磨された外装や文字盤の作りにより、軍用時計とは一線を画す高級感を実現。60分積算計とクロノグラフ針を同軸に配置した設計もほかにはない個性を主張している。
初出は98年。特徴的なトノーケース、ツーカウンタークロノグラフと、リシュビル クロノグラフで構築された基本デザインを継承しつつ、ドレス寄りな雰囲気が強かったリシュビル クロノグラフとは別の方向性を打ち出し、40年代の軍用ナビゲーションウオッチ(レマニア、エテルナなどがチェコスロバキア空軍に納入したモデルなど)を彷彿とさせる、クラシックでありつつスポーティなデザインに仕上げられている。
また、独特の鋭角的で重厚なケースと並んで特徴なのが文字盤だ。夜光を塗布したアラビアインデックスを採用し、インダイアルも目盛りをはっきりと際立たせたデザインを採用。これも、ケースと同じくアビエーションウオッチの意匠がモチーフになっていると思われる。
デザインに加えて、機構も面白い。一見するとクラシックなツーカウンタークロノグラフだが、3時位置のインダイアルが秒針、9時位置のインダイアルが24時間針になっており、60分積算計は文字盤中央のクロノグラフ針と同軸に配置されている特殊な設計なのも特徴だ。
ケース、ブレスレットの完成度が高く、2本の針が重なった状態で設置された独特の意匠も魅力的。ポストヴィンテージを代表するクロノグラフのひとつといえるだろう。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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