アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
ロンジン
ラウンド“セイタケ”
人気の高いアンティーク時計では、しばしば愛好家の間で愛称が付けられることがある。
ここで取り上げるロンジンの“セイタケ”(Sei-Tacche)もそのひとつだ。
ロンジンと言えば“トレタケ”(Tre-Tacche)という名称のほうが有名だが、これが溝(イタリア語でTacche)が三つ(イタリア語でTre)あるスクリューバックを意味するのに対し、“セイタケ”は溝が六つ(イタリア語でSei)あるスクリューバックのことを指す。

【商品情報】ロンジン セイタケ。SS(36mm径)。手巻き(Cal.12.68Z)。1950年代。69万3000円。取り扱い店/プライベートアイズ
この個体は、1950年代前期に製造されたロンジンで、初期の厚みのあるケースからラウンドシェイプした薄型へ変更された後期型“セイタケ”だ。33mmサイズが多く見られるセイタケでは珍しい、36mmサイズのジャンボケースで、アメリカのブレスレットメーカー、JB.チャンピオン社製のオリジナルブレスレットが付属することでより存在感が際立つ逸品である。
“パンダ”と呼ばれるツートンダイアルはジャンボケースならではの絶妙なバランスと風合いある経年変化が素晴らしいテイストで、スモールセコンドやセンターセコンド、ストップセコンドなどバリエーション豊富なロンジンを代表する名機Cal.12.68Zを搭載している。シンプルかつ古典的な設計ながら丁寧に分割された受け板や、シャトン付きの穴石など、かなりの手間をかけたムーヴメントである。1929年を初出とし、長年にわたって生産されたことから、その信頼性の高さがうかがえる。堅牢なケースとあいまって、現代における実用も問題ないだろう。
丸みのあるケースデザインとツートンのダイアルはどこか可愛らしくも、使用シーンを選ばない。万能なスタイリングは、アンティーク初心者から上級者を問わず、誰にとっても使いやすい時計として作られている。ロンジンはほかの有名ブランドの時計と比較すると、華やかさや革新的な技巧、突出したデザインはあまり見られない。
しかし部品一つひとつの精度や基本に忠実な設計を磨き上げることで、正確な時を刻む時計を生み出してきた。この真面目さがロンジンというブランドの信頼と地位を築き上げてきたことは言うまでもない。クラフトマンシップを肌で感じたい、堅牢なアンティークウオッチを探している人にはおすすめの1本だ。
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文◎LowBEAT編集部