なぜ時計好きに評価されるのか? 違いはどこ、 何がメリット?
さて本題。メカクォーツとは端的にいうと、動力源は一般的なクォーツと同じく電池式ながらも機械式のクロノグラフ時計と同じ動作と操作感が楽しめる点にある。そして、どちらかというと日本よりも海外のほうがよく使われており、特にマイクロブランドと呼ばれる小規模時計メーカーに人気で搭載したモデルの数もとても多い。
理由は機械式クロノグラフムーヴメントだと機械自体が高額になり製品も数十万円となってしまうためリスクが大きいからだろう。その点ディテールにこだわった少し高級なクォーツクロノグラフを製作するには機械式の要素も楽しめるとあって、メカクォーツクロノグラフムーヴメントは独自色を打ち出すうえで好都合だったのである。
日本で知られるようになったのも6〜7年ぐらい前からだろうか、そんなマイクロブランドが作ったクロノグラフが時計愛好家に注目されるようになってからだ。その代表的なものがダン・ヘンリーというマイクロブランドである。ブランドオーナーでもあるダン・ヘンリー自体がアンティーク時計のコレクター。そのためコレクション自体もそんなアンティーククロノグラフの雰囲気を見事に再現していて、機械式クロノグラフのような動きに加えて、当時の日本円で4〜5万円だったこともあって日本の時計愛好家から大いに注目を浴びたというわけだ。
その後、2021年にはファーラン・マリというスイスのマイクロブランドが、同社初のコレクションとして40年代のパテック フィリップのクロノグラフから着想を得たメカ・クォーツ搭載のクロノグラフ時計を発表(上の写真)。それが時計界のアカデミー賞であるジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)の低価格帯の部門で受賞したこともあって世界的に再評価されたのである。
そんなメカ・クォーツ搭載モデルだが日本で販売されている時計は少ない。セイコー自体もいまでは現行ラインナップに搭載していないこともあって時計好き以外はあまり知られていないというのが正直なところだ。
では、具体的に一般的なクォーツクロノグラフムーヴメントとどこが違うのか。主に以下の三つが挙げられる。
1、 クロノグラフ計測秒針の動き
通常のクォーツ式クロノグラフの場合は、中央にあるクロノグラフの計測用秒針は1秒ごとに動くステップ運針となるのが一般的。それがメカクォーツの場合は機械式のように滑らかに動くスィープ運針する。
2、 計測針類のゼロリセット
クロノグラフ計測後にその計測針を12時位置にリセットをする場合、通常クォーツクロノは、4時位置のリセットボタンを押すとゆっくり自動回転して帰針する。対してメカクォーツは機械式クロノグラフのように、リセットボタンを押すと同時に「カチッ」と瞬時に針はゼロリセットされる。これは機械式クロノ機構と同じくリセットハンマー(下の写真)によって制御しているためである。
3、 スタート&ストップボタンのクリック感
クロノグラフ計測針を作動・停止させる2時位置のスタート・ストップボタン。機械式クロノ同様にメカクォーツではすべての動作で「カチッ」という音とともにクリック感が指に伝わる。しかし一般のクォーツクロノの場合は、ちょっと弱いうえに肝心のストップ時にはクリック感がほとんどない。
メカクォーツ式クロノグラフのメリットとは!
筆者的には二つあると思っている。ひとつは機械式クロノグラフとなるといまや安くても20万円以上。そんな機械式の雰囲気や動作が3万円台から楽しめるというコストパフォーマンスの高さ。しかも一般的なクォーツよりもディテールなどデザイン的にもこだわって作られているものが多い。
二つ目は機能面。違いの2番目に挙げたゼロリセットである。通常のクォーツクロノはゼロリセットでクロノグラフ秒針が12時位置に帰針する際にゆっくり戻るがメカ・クォーツは瞬時に戻るため、再計測が素早く行える点である。
いずれにせよ人によってはどうでもいいことかもしれない。ただ、腕時計のようなファッション的な志向が強いアイテムには、こういった違いが所有するうえでのこだわりとなるのではないかと思う。