近年、機械式時計の3大複雑機構のひとつに数えられる“トゥールビヨン”が、数十万円という昔では考えられないような価格で展開される時代になった。こうしたことが可能になった背景には、時計を製造する機械や技術の目覚ましい進歩に加え、流通チャンネルの多様化など、様々な要因が挙げられる。
ウオッチライフニュースでは、トゥールビヨンをはじめ、従来は高級時計に採用された素材、機構を備えつつ、頑張れば手の届く数十万円の価格を実現した時計を“価格破壊ウオッチ”として紹介してきたが、今回は、これまでは高級時計に採用されることの多かった“カーボン”に注目してみた。
カーボンはスチールの約4分の1と軽量でありながら、強度はおよそ10倍、さらに非金属素材のためアレルギーとも無縁という優れた特性を備える。その特性から航空・宇宙産業などでも使用されている素材だ。加工が難しく製造コストも高いが、近年では加工技術の向上により、手頃な価格の時計でもカーボンを採用するモデルが増えている。
本記事では、炭素繊維(カーボンファイバー)を強化材として加えた複合材であるカーボンコンポジット、鍛造成形することによって硬度を高めたフォージドカーボンなど、“カーボン”を採用した価格破壊モデルをクローズアップ。10万円台の価格帯から、おすすめの4モデルを紹介していく。
TISSOT(ティソ)
PRX パワーマティック 80 40MM カーボン
高機能素材、フォージドカーボンをケースと文字盤に採用し、一つひとつが異なる質感で個性的な仕上がりなのが特徴。3時位置にはデイト表示を配置し、インデックスや針、ロゴはシルバーで統一することで漆黒の美しさが際立つよう仕上げられた。ベルトにはブラックのラバー素材を合わせ、無骨な雰囲気を演出している。
ムーヴメントは最長80時間というロングパワーリザーブを誇る“パワーマティック 80”を搭載し、見た目だけでなく機能面でもタフな性能となっている。素材のユニークさはもちろん、このスペックで10万円台というコストパフォーマンスの高さも大きな魅力と言えるだろう。
【問い合わせ先】
ティソ
TEL.03-6254-5321
VICTORINOX(ビクトリノックス)
イノックス オートマチック カーボンコンポジット
スイスアーミーが採用したマルチツールの製作でも知られ、ステンレススチール加工において100年以上の経験と実績を誇るスイスの老舗ブランド“ビクトリノックス”。 “イノックス オートマチック”は、発表から10年を迎えるフラッグシップモデルであるイノックスの最新作だ。
ベゼルとケースの素材にはカーボンコンポジットを採用。鋭いマルチツールで削り出したかのような造形とカーボンの質感がスポーティな雰囲気を感じさせる。軽量なカーボンコンポジットケースに加え、20気圧(200m)防水とISO 1413認定の耐衝撃性を備え、あらゆる状況に対応する。炭素繊維が混ざり合うことで生まれる独特の模様も大きな魅力だ。
【画像】バリエも豊富(SSも)、イノックス オートマチックを見比べる
【問い合わせ先】
ビクトリノックス ジャパン
TEL.03-3796-0951