アンティーク時計専門サイト「LowBEAT Marketplace」には、日々、提携する時計ショップの最新入荷情報が更新されている。
そのなかから編集部が注目するモデルの情報をお届けしよう。
オメガ
イギリス陸軍 W.W.W.
第2次世界大戦期、イギリス陸軍が採用した有名な軍用時計が“W.W.W.”だ。
このW.W.W.とは、“Wrist Watch Waterproof”の頭文字で、つまりは“防水腕時計”のことである。
W.W.Wシリーズは全部で12社もの時計メーカーが製造を担ったことでもよく知られている。アメリカ軍のミルスペックのように細かく規定されていたわけではなかったため、針の形状やケースサイズなどメーカーによって様々だったが、イギリス陸軍はその仕様について各時計メーカーに、大前提として“防水性能があること”を求めた。
陸軍では塹壕内の戦闘が多いが、そこは雨や泥でぬかるむ劣悪な環境にあった。そんな環境で使用する時計は、いかに雨や泥を防ぐかが重要であり、先の世界大戦での経験をフィードバックし、防水仕様の腕時計を求めたというわけだ。
このほか、“15石の手巻きスモールセコンドムーヴメントを搭載すること”、“黒文字盤で夜光インデックスを採用し、ケースのベルト取り付け部分がハメ殺しであること”を共通の仕様として要求した。
製造を担った時計メーカーと推定製造を列挙すると、オメガ(2万5000本)、レコード(2万5000本)、シーマ(2万本)、バーテックス(1万5000本)、ティモール(1万3000本)、ビューレン(1万1000本)、ジャガー・ルクルト(1万本)、レマニア(8000本)、IWC(6000本)、ロンジン(5000本)、エテルナ(5000本)、そしてグラナ(1000〜1500本)となっている。
これらを合計すると14万本以上という数になり、それゆえに今日でも比較的手に入りやすい軍用時計だ(もっともグラナなど製造数が少なかったブランドもあり、これらは希少)。
先述のとおり、仕様について細かく規定されていたわけではなかったため、同じW.W.W.でありながらも、メーカーによって細かな違いがあり面白い。後年、愛好家から人気を得た背景には、もちろん時計としての完成度や重厚なバックボーンもあるが、こうしたコレクター心をくすぐるポイントも関係しているのかもしれない。
ちなみにW.W.W.シリーズは、“ダーティ・ダース(Dirty Dozen)”と呼ばれることも多いが、これはあくまで、後年になって愛好家たちの間で定着した通称である。一説には1967年に公開されたイギリス・アメリカの戦争映画『The Dirty Dozen(原題)」がその由来だったといわれる。
【LowBEAT Marketplaceでミリタリーウオッチを探す】
文◎LowBEAT編集部