1974年、セイコーはそれまでハイエンドラインとして展開していた“特選腕時計”を、新たに“クレドール(黄金の頂きの意)”と名付けてブランド化した。
その後79年に当時の流行にあわせて、SSケース、スクリューバックとネジ込み式リューズを採用し10気圧防水を実現した、国産初のいわゆるラグジュアリースポーツモデル3種を発表している。
それがKEH、KZT、KZHの3モデルだ。
型番でいうとあまりピンとこないかもしれないが、このひとつ“KEH”こそ、オーデマ ピゲのロイヤル オークなど数々の傑作を手がけたことで知られるジェラルド・ジェンタがデザインした“ロコモティブ”だ。
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ロコモティブのオリジナルモデル。“機関車”をモチーフにした独創的なデザインはいま見ても非常に新鮮。文字盤には機関車から吹き出した蒸気をイメージした繊細なパターンが施されている。 ■Ref.KEH018。SS(36mmサイズ)。クォーツ(Cal.5932)。143万円(取り扱い店:BQ)
ロコモティブは以前より国産愛好家の間ではよく知られた存在だったが、2024年にクレドールブランド誕生50周年を記念し、チタン仕様で限定復活したことで、一気に多くの人に知られるようになった。
対してKZT、KZHはどういったモデルか。
ロコモティブとコンセプトを共通することから、こちらもジェンタデザインとウワサされていたが、実はそういった事実は確認されていない。また文字盤やブレスレットなどの造形をよく見てみると、ロコモティブに比べて明らかにコストへの配慮がうかがえることから、現在はセイコーの社内デザイナーよるものだったという説が有力だ。
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さざ波をモチーフにした文字盤パターンが施されたKZT。ベゼルの一部にイエローゴールドを組み合わせ、シャンパン文字盤を採用したバリエーションも存在する。■Ref.KZT014。SS(37mmサイズ)。クォーツ(Cal.9461)。55万円(取り扱い店:BQ)
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直線と曲線を組み合わせた特徴的なフォルムのベゼルを採用し、よりドレッシーな雰囲気に仕上げられたKZH。■Ref.KZH026。SS×K14YG(34×38mmサイズ)。クォーツ(Cal.9661)。16万5000円(取り扱い店:BQ)
筆者は幸いにもこの3本の実物を見る機会を得たが、確かにロコモティブとそれ以外の2モデルについて外装クオリティに差を感じることは否定できない。
とは言え、KZT、KZHともに、ロコモティブに引けを取らない前衛的かつ魅力なデザインに仕上がっているし、装着感という点でもいずれも薄型のため快適で甲乙つけがたい。
そして何より高騰したロコモティブに比べて相場が控え目という点は大きな魅力と言えるだろう。
文◎堀内大輔
※本記事で取り上げている時計は、LowBEAT Marketplaceの取り扱い商品になります。