今日世界で最も名高いジュエラーである“カルティエ”は、腕時計でも多くの傑作を生み出している。
そのなかでも、時代を超えていまも愛され続けている傑作腕時計と言えるのが、角形ケースが特徴となった“タンク”だ。
タンクの誕生はいまから100年以上前にさかのぼる。
1917年、当時、同ブランドの担い手だったルイ・カルティエがフランスの軽戦車“ルノー FT-17”を上から見た形に着想を得てデザイン案をおこした“タンク ノルマル”がその原点だ。
ベゼルレスの造形に風防とベルトの幅を揃えるというその独自のシェイプは、まだ腕時計自体が普及していなかった時代に、非常に新鮮なものであり、同時に後に世界的に流行するアール・デコを先駆けたもので、デザインにこだわる愛好家たちの間ですぐさま大きな反響を呼んだ。
そして以降も、基本的なコンセプトを踏襲しつつも、次々とユニークなバリエーションを生み出すとともに時代にあわせてデザインを進化させ、アイコンとして定着していったのである。
タンクはもちろんいまも現行品として展開されており根強い人気を誇るのだが、とりわけファッション感度の高い愛好家からは“アンティーク”の人気も非常に高い。
そこでここでは、経年によって魅力を増したアンティークタンクを3モデル紹介する。
<タンク ルイ・カルティエ>
スクエアに近いケースをもつタンク ノルマルに対し、縦に長いレクタンギュラーケースを採用したバリエーションとして1924年に誕生したタンク ルイ・カルティエ。タンクを象徴するモデルのひとつであり、基本デザインを変えずに製造が続けられたが、60年代を境に搭載ムーヴメントがジャガー・ルクルト製(とEWC製)からETA社製にスイッチしている。前者は製造数が少なくコレクターズアイテムという位置付け。対して後者のモデルは比較的製造数が多く、現実的に狙うとしたらこちら。写真は70年代製のタンク ルイ・カルティエで、カルティエ パリで製造されたこと示すPARIS文字盤だ。
<マストタンク LMサイズ>
それまで特権階級のためのブランドとして認識されていたカルティエが、1976年に一般向けとして展開したのが、タンクの普及版がマストタンクだ。“生活に不可欠なもの”をコンセプトに掲げたマストタンクは、スターリングシルバーに金メッキを施したヴェルメイユケースを採用し、一見して既存のタンクと違いないラグジュアリー感を備えながらも低価格化を実現した。また文字盤のデザインは非常に豊富なバリエーションが展開されている。この個体は鮮やかなブルーカラーのラピスラズリ文字盤が採用されている。
<タンク レディース>
1980年代製のタンク レディースサイズ。ミニッツ目盛り付きのローマン数字インデックス、ホワイト文字盤、ブルースチール針、カボションリューズなど、タンクの王道的なデザインながら、20.5×20mmサイズという小振りな18金製ケースを採用する。
文◎堀内大輔
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