多機能型のスマートウオッチが普及し、ますます選択の幅が広がる腕時計の世界。TPOに合わせて多種多様な腕時計を使い分ける人も少なくないだろう。アナログとデジタル、機械式とクォーツといった分類はよく知られているが、今回は知ってそうで知らない、もう一歩踏み込んだ違いについて取り上げてみよう。
まずは、“電波時計”と“GPS時計”についてだ。こちらも名前はよく知られているが、その違いを本当に理解できているだろうか。一言で言ってしまうなら、“どこから発信される電波を受信するかの違い”である。
電波時計とは、地上にある標準電波送信所から送信される、正確な時刻情報をのせた電波を受信して自動で時刻を修正する機能をもつ時計を指す。屋内でも電波の受信が可能で、消費電力が少ないため、電池持ちが良いことなどがメリットとして挙げられる。また、ソーラー機能と同時に搭載されていることが多く、日に当てていれば半永久的に動いてくれる。一方で、受信できるエリアが限られるというデメリットもあり、電波の届かないエリアに出てしまうと、自動の時刻合わせ機能が使えなくなってしまうので注意が必要だ。
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それに対しGPS時計とは、地球周回軌道上にあるGPS衛星から送信される電波を受信する機能をもつ時計のことだ。宇宙からの衛星波のため、世界中のどこにいても屋外であれば受信が可能。電波時計ではミリ秒単位なのに対して、GPS時計はナノ秒〜マイクロ秒単位の精度が出る(※1ミリ秒をマイクロ秒で換算すると1000マイクロ秒となる)ため、精度としてもGPS時計のほうが上だといえる。(ただし、実際に時刻を確認する場面においては、この両者の精度差はほとんどわからないだろう)デメリットとしては屋内だと受信がしづらいことと、電波時計に比べて高額になってしまうことだ。
続いては、“LEDウオッチ”と“LCDウオッチ”についてだ。デジタル時計というカテゴリーに属す両者だが、“発光ダイオード(LED=Light Emitting Diode)”を使用したLEDウオッチに対して、LCDウオッチという呼称については、あまり馴染みがないかもしれない。LCDウオッチとは、“液晶ディスプレイ(LCD=Liquid Crystal Display)”を使用した時計のことである。
最初に登場したLEDウオッチは、米国の宇宙開発の副産物として開発された。ボタンを押すと、ブラックフェイスの上に赤い数字が浮かび上がるのがかっこいいと評価され、当時話題を集めた。その後、70年代後半に誕生したのがLCDウオッチだ。2枚の板の間に特殊な液体を封入し、電圧をかけることで数字や図式を表示する。
ただ、先行していたLEDウオッチは明るい光を発光するため視認性には優れていたのだが、ボタンを押さないと時刻が表示されないこと、また消費電力が非常に大きいことから電池が数カ月しか持たないという欠点があった。さらに発光と同時に熱も出すことから、頻繁に点灯することで過熱して、故障を引き起こす可能性もあったのである。
その点LCDウオッチは、消費電力が少なく鮮明なツイスト・ネマチック液晶の開発により、ボタンを押さずとも常に時刻を表示させておくことが可能となった。いつでも確認できるとあって、LEDに代わりその後急激に普及したのだった。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
<参考文献>
織田一朗『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』(講談社、2017年)P153〜P163
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