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【昭和&平成の隠れた名作:Vol.19】ヴァシュロン・コンスタンタンの“222”

機械式時計黄金期といわれる1950~60年代を経て、クォーツや大量製造される時計の台頭で凋落していった70年代の機械式時計。しかし、ピンチはチャンス、という言葉もあるように、そんな時にこそ新しいジャンルが生まれることもある。

72年に登場したオーデマ ピゲのロイヤル オークに代表される、高級スポーツ時計というジャンルもそのひとつだ。ロイヤル オークはジェラルド・ジェンタがデザインを手掛けているが、“薄型”、“高品質な仕上げ”という従来のドレスウオッチの美点を継承しつつ、同時に実用時計の堅牢さや防水性能を備えているのが特徴。薄型かつスポーティな外装に、宝飾時計に匹敵する徹底した仕上げを施すことで、汎用素材を使った高級時計という新たな価値感を生み出したのだ。そして、この高級スポーツ時計というコンセプトは数多くの時計ブランドで採用されていくことになる。

ヴァシュロン・コンスタンタンの222周年を記念して77年に登場した“222”もそんなモデルのひとつだ。


■Ref. 44018/411。YG(37mm径)。120m防水(当時)。自動巻き(Cal.1221)。参考商品

VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン)
222

ヘアライン仕上げと面取りを巧みに組み合わせることでエッジ感と立体感を際立たせる手法、ブレスレット一体型の薄型2ピース構造ケースなど、ロイヤルオーク(72年発表)、ノーチラス(76年発表)でジェラルド・ジェンタが確立した設計思想を取り入れたデザインが特徴。77年に製造された37mmケースの初代モデルは“ジャンボ”の通称で知られ、ムーヴメントは薄型自動巻きの名機として知られるジャガー・ルクルト製のCal.920をベースにしたCal.1221を搭載。翌78年からは34mmケースの第2世代に移行し、ムーヴメントもジャガー・ルクルト製のCal.889を改良したCal.1124に変更されている

【222のディテールとバリエーションをもっと見る】


デザインを手掛けたのは、当時、デザイナーとして頭角を現していたヨルグ・イゼック。ヴァシュロン・コンスタンタンから“エベルやパテック フィリップのようなスポーツウオッチを作って欲しい”という要望を受けて“222”を製作したとされており、一体型の設計、薄型の造形など、ロイヤル オークに通じる設計思想が随所に見受けられる。

特徴的なのが、裏ブタのない一体型ケースに、ベゼルでフタをする気密性の高い2ピース構造のケースだ。8本のビスでベゼルを固定したロイヤル オークに対して、222ではネジ込み式でベゼルを固定しており、約6mm(ロイヤル オークは約8・2mm)と薄型ながら、当時としては珍しい120m防水(ロイヤル オークは50m防水)を実現。専用オープナーを引っ掛ける半円形のグリップを刻んだベゼルは、気密性を高めるのに加えてデザイン的なアクセントとしても存在感を主張している。

翌78年にはケースを34mmに縮小した3針タイプに移行するため、2針の文字盤、37mmのケースを採用した初代モデルが製造されたのは77年のみ。一説にはゴールドが100本、コンビが120本、ステンレススチールが500本だけ製造されたといわれており、ポストヴィンテージを代表するコレクターズモデルとして、愛好家から熱烈な人気を獲得している。


 

文◎Watch LIFE NEWS編集部

 

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