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【昭和&平成の隠れた名作:Vol.15】時計界の奇才“アラン・シルベスタイン”

1980年代の後半から盛り上がりを見せ、90年代に花開いた機械式時計ブーム。機械式時計が復権するのに際し、伝統的な職人技術の再評価というのが非常に重要なキーワードになっていたが、その職人技術を象徴する存在のひとつといえたのが、独立時計師の存在だ。

独立時計師とはいわゆる企業体としての時計ブランドに属さずに、個人としてブランドを創設し、時計を製作、販売する時計職人のこと。完全にひとりで時計を製作するスタイルから、数人の職人を抱えて小規模な独立系ブランドとして時計を製造するスタイルまで様々だが、マーケティングの影響が大きい大規模ブランドと異なり、時計職人のパーソナルな美意識や製品哲学が濃厚に反映されているデザインや機構を採用しているのが特徴。小規模、少量生産である希少性の高さや独創性が評価され、時計愛好家から支持を集めることになった。

アラン・シルベスタインも、そんなポストヴィンテージを彩った独立時計師のひとり。元々はフランスで建築や工業製品のデザイナーとしてキャリアを積んでいたが、89年に自身の名前を冠した時計ブランドを創設。従来の高級時計のイメージを覆すカラフルな色使い、ユニークな造形により熱烈な愛好家を生み出した。


■SS (38mm径)。自動巻き(Cal. ETA 2892A2)。世界限定10本。参考商品

ALAIN SILBERSTEIN(アラン・シルベスタイン)
クラブメディオ ドラゴン

世界10本の限定モデル。躍動感のあるドラゴンが描かれたエナメルダイアルと幾何学的造形を随所に取り入れたポップな外装パーツのコンビネーションが、ほかにはない独特の世界観を生み出している。ホワイトエナメル以外にも、イエローエナメル、ブラックエナメルなど、ドラゴンをモチーフにした限定モデルは多彩なバリエーションが製作されている。


シンプルな幾何学的フォルムをデザインに取り入れているのもアラン・シルベスタインの特徴。このモデルではラウンドケースを上下に貫いているかのような円柱ラグ、三角形のリューズを採用し、簡潔なデザインながら、ほかのブランドにはない個性を表現している。

【アラン・シルベスタインの時計をもっと見る】


今回クローズアップしたのは90年代中頃に発表された限定モデル。アラン・シルベスタインはカラフルな色使いや独創的な造形を取り入れつつ、シンプルさと機能性を重視するバウハウスのデザイン哲学をベースにしているのだが、このモデルでは伝統技法であるエナメル装飾を取り入れ、独特のオリエンタルなデザインを採用。金属製の文字盤の表面に釉薬を塗布して高温で焼成するエナメル装飾を施し、陶器を思わせるホワイトエナメルに金のドラゴンがデザインされている。当時、高級時計のマーケットとして急激に存在感を増して来た中国市場を意識したデザインと思われるが、アラン・シルベスタインのユニークな感性と職人技術が組み合わさった異色のモデルといえるだろう。


 

文◎Watch LIFE NEWS編集部

 

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