1980~90年代に作られた、いわゆるポストヴィンテージの腕時計。この時代に作られた時計と現代の時計の違いとして挙げられるのが、デザインとパーツの仕上がりだろう。
“デザイン”に関していうと、すべてのモデルに当てはまるわけではないが、機械式時計の復権に各ブランドが注力していた時代のため、ブランドのアイコンとなるような個性的なデザインを備えていることが挙げられる。また“作り”に関しては、工業製品的で無機質な質感が強くなっている現行の時計に比べると、手作業による仕上げの質感が残っているのも特徴といえるだろう。
今回取り上げた、ブランパンのトリロジーフィフティファゾムスは、ブランパンが、98年に発表したポストヴィンテージを代表するモデルのひとつだ。
BLANCPAIN(ブランパン)
トリロジー フィフティファゾムス
1960年代後半~70年代にブランパンが製作した軍用ダイバーズウオッチ、“フィフティファゾムス”からアイディアを得て98年に発売されたトリロジーコレクション。96年にフレデリック・ピゲがGMTムーヴメントを開発したのをきっかけに、GMT=陸、ダイバーズ=海、クロノグラフ=空をコンセプトに三つのモデルが開発された。
このモデルはフィフティファゾムスのバリーエションとして製作されたホワイトゴールドケース採用モデル。クリーム色に焼けた夜光インデックスとサンレイ仕上げを施したブルー文字盤のコントラストがポストヴィンテージモデルらしい味わいを醸し出している。搭載するCal.1151は、当時としては珍しい100時間パワーリザーブを誇る。
当時、ブランパンはムーヴメントメーカー、フレデリック・ピゲとCEOであるジャン・クロード・ビバーの蜜月関係のもとで84~89年に機械式時計の伝統機構を再現したシックスマスターピースを発表。それ以降も、グランドコンプリケーションなど、愛好家向けのクラシックラインを精力的に展開していたが、より幅広いユーザーを獲得するため、98年からダイバーズ、クロノグラフ、GMTの3モデルからなるトリロジーシリーズを発表する。
最大の特徴と言えるのが、分表示を立体的なレリーフ状に成形した回転ベゼルだろう。凹凸のある複雑な面に対して異なる仕上げ方法を組み合わせて完成するため、当時の技術でこのベゼルを製作するのには高度な技術と時間が必要だったといわれている。
ベゼル以外にも、エッジを際立たせて丁寧に研磨された針、当時はまだ珍しかったドーム状のサファイアガラス風防など、パーツには随所に高級時計らしい作り込みが徹底されている。視認性を高めるため、文字盤とギリギリの距離で設置された針にも、職人の高度な技術を垣間見ることができるだろう。
また、このモデルの大きな魅力と言えるのが、そのサイズ感だ。重厚なベゼルに影響されて一見大振りに見えるが、ムーヴメントにフレデリック・ピゲ社製のCal.1151を採用することで、300m防水(当時)の本格ダイバーズながら、ケース径40.3㎜、厚さ約13㎜のサイズに仕上げられている。とかく大振りで分厚いモデルが多いダイバーズウオッチのなかで、この手頃なサイズ感は大きな魅力といえるだろう。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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