機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。
今回は、1980年代のIWCを象徴するポルシェデザインとのコラボレートコレクションから、代表作のひとつであるコンパスウォッチを紹介していく。
1980年台後半に機械式時計が復活するきっかけとなったのはクォーツへの反発ともいえる古典的機構や職人技術の再評価であったが、機械式時計の需要増加に伴ってニーズも多様化。古典的機構だけでなく、各社がスポーツモデルの開発に力を入れるようになっていく。ブランパンのトリロジーなど、アイコンモデルがいくつも輩出されているが、そんななかでも突出した個性と完成度の高さと人気を誇るのが、ポルシェデザインby IWCだろう。
ポルシェデザインはポルシェ創設者の孫であり、名車として知られる911や904を手がけたフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが72年に設立したデザインスタジオだ。多彩なプロダクトを出がけているが、時計に関してはポルシェデザインがデザイン、製造を他社に依頼するスタイルを採用しており、IWCと提携する以前にも、オルフィナと提携して外装にチタンを採用した世界初のクロノグラフを発表したことで知られている。
IWCとは75から94年まで提携を結んでおり、オーシャン2000、チタニウムクロノグラフ、ワールド・タイムなど、洗練されたデザインと機能性を両立した時計を輩出。80年代にIWCを支えた屋台骨となったのに加え、人間工学を取り入れたミニマルで洗練されたスタイル、当時は加工の難しい先進素材であるチタンを採用した革新的なウオッチメイキングなど、ポストヴィンテージ時代のIWCを代表するスポーツコレクション、GSTシリーズにも大きな影響を与えている。
PORSCHE DESIGN by IWC(ポルシェデザイン by IWC)
コンパスウォッチ
時計本体部分はラグサイドのボタンを押すことでが開閉が可能。時計の下に着脱可能なコンパスが設置されており、ラグの1時位置と5時位置に刻印された簡易的な照準器と併用することで方位測定意を行うことができる。
今回紹介するチタニウムコンパスは、ポルシェデザインとIWCのコラボレートがスタートしてすぐ、78年に登場したコンパスウォッチのチタン仕様だ。一見するとポルシェデザインby IWCらしいシンプルな時計に見えるが、6時方向のラグの両側のプッシュボタンを押すと、文字盤が上に開く仕組みになっており、内側にコンパスとミラーを搭載しているのが特徴だ。
写真のRef・3511のほか、ケースにジュラルミン、ブレスレットにデルリン(特殊なプラスチック)を採用したRef・3510、ムーンフェイズを搭載したRef・3551が製造されており、コレクターズモデルとして現在も根強い人気を維持している。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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