機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。
この時代の時計には単なる“中古時計”という評価の枠では収まりきらない、アイコニックな意匠を備えた名作を見つけることができる。今回は、1997年にIWCが発表したGSTコレクションのファーストモデル、GSTクロノグラフに注目。
1990年代には機械式時計復興を牽引したアイコニックなモデルが各社から輩出されているが、そのなかでも時計好きから高い支持を得ているのがIWCのGSTシリーズだ。GSTとは、G(Gold=ゴールド)、S(Stainless=ステンレススチール)、T(Titanium=チタニウム)の頭文字を組み合わせたもので、素材違いで多彩なラインナップを展開している。
定番機であるGSTクロノグラフのほか、クォーツ仕様のGSTクロノ、GSTオートマティックアラーム、2000m防水を誇るGSTアクアタイマー、機械式水深計を備えたGSTディープワン、GSTクロノラトラパンテ、GSTパーペチュアルカレンダーと種類が様々なのだが、いずれのモデルもブレスレットをケースと一体感をもたせたデザインを特徴としている。
IWC(アイダブリューシー)
GSTクロノグラフ
1997年に登場したGSTシリーズのファーストコレクション。写真のステンレススチールモデルのほか、チタンモデルも展開された。
分厚いケースと薄型のブレスレットを違和感なく組み合わせるために生み出されたのが、ケースと一体成形された独特のラグデザイン。ブレスレットに向けて先端を細く絞り込んでいるため、ケースが目立ちすぎないように薄型ブレスレットを設置することができる。
このGSTシリーズ独特のデザインのベースになったといわれているのが、70年代から80年代に一時代を築いた“ポルシェデザイン by IWC”だ。フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが設立したポルシェデザインがデザインを手掛け、IWCがチタンケースなどの製作を請け負って作られた“ポルシェデザイン by IWC”は、人間工学的な観点をデザインに取り入れた独自のデザインを構築。ケースとブレスレットに一体感をもたせたフォルム、バーインデックスと目盛りで構成された機能的な文字盤など、GSTシリーズと多くの共通点を確認できる。
ムーヴメントはETA社のCal.7750をベースに、IWCがモディファイしたCal.7922を搭載。Cal.7750で採用しているエタクロンよりも精密な調整が可能なトリオビス緩急針を採用するなど、自社で高級機仕様の改良を加えている。デザインはもちろん、機能面でも細部までこだわりが感じられる名作と言えるだろう。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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