機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。
この時代の時計には単なる“中古時計”という評価の枠では収まりきらない、アイコニックな意匠を備えた名作を見つけることができる。第4回は、IWCの名作ダ・ヴィンチの派生モデルに注目してみよう。
機械式時計の価値が再評価され、高級時計ブームが世界的に広がっていった1990年代の時計界。その要因のひとつとなったのが、クォーツのカウンターともいえる複雑な機構を搭載したモデルであった。ユリス・ナルダンの天文3部作など、愛好家の購買意欲を掻き立てる希少性の高いコンプリケーションウオッチがその流れを後押ししたとされているが、より一般的な顧客に向けて製作され、高級機械式時計の裾野を広げる役割を果たしたのが85年に発表されたIWCのダ・ヴィンチだろう。
IWCを象徴する存在といえる時計師クルト・クラウスが、手がけたこの名作は、機械式時計の最高峰とされる永久カレンダーを搭載しつつ、既存のムーヴメントをベースにする(ETAの7750をベースに、永久カレンダーのモジュールを加えている)ことで、一般のユーザーでも手の届く価格帯を実現。従来の永久カレンダーに比べて、堅牢さ、使いやすさを重視した作りであったのに加え、工業的に大量生産できることを前提とした設計を採用し、大ヒットを記録したことが知られている。
IWC(アイダブリューシー)
ダ・ヴィンチSL
ダ・ヴィンチの特徴である可動式ラグを採用したエレガントな意匠を継承しつつ、防水性を高めて1997年に登場したスポーツコレクション“ダ・ヴィンチSL”の3針モデル。トリチウム夜光のバーインデックスを配した機能的な黒文字盤、オールヘアライン仕上げのケースなど、実用性を重視した作りがダ・ヴィンチのなかでも異色の存在感を放っている。
今回紹介するダ・ヴィンチSLは、そんな永久カレンダーの大ヒットを受けて、97年に登場した派生モデルのひとつ。12気圧防水(当時)を備えるなど、永久カレンダーよりも実用性を重視した作りが特徴となっており、ヘアライン仕上げの外装、夜光インデックスを配した文字盤と、スポーツウオッチに近い意匠が採用されている。
パーペチュアルカレンダーでは夜光のないバーインデックスを採用しているが、ダ・ヴィンチSLではトリチウム夜光を塗布した実用性の高いスクエアのアップライトインデックスを採用。ベージュにエイジングした夜光がアンティークテイストを醸す。パーペチュアルカレンダーのダ・ヴィンチにはない良い意味で無骨な意匠が、シンプルでありつつ異色の存在感を主張している。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
【そのほかの記事もチェック!】
■【ブライトリング、二つの日本限定モデル】“クロノマット”の新作がかっこいい!