ロレックスの入門用としても高い人気を誇る“デイトジャスト”。これまで開発してきたオイスターケース(防水ケース)にパーペチュアル(自動巻き)、カレンダー機構の搭載など、ロレックスが掲げてきた実用時計の完成形として創立40周年を迎えた1945年に発表された。
このデイトジャストは、午前0時に瞬時に日付けが切り替わる機能(ジャストチェンジ)から名前が付いたとも言われる。しかし、当初はの日付け表示は、午前0時のかなり前から徐々に時間をかけて切り替わる仕組みだった。デイトジャスト機構が完成して特許を取得したのは1950年代半ば。当時のデイトジャストに搭載された自動巻きムーヴメント“Cal.1065”からだったのである。
【画像ページ:“Cal.1065”を搭載した当時のデイトジャスト】
ロレックス創業者のハンス・ウイルスドルフが、「カメラのシャッターは1/10秒でも動く。カメラも腕時計も同じ機械だから、カメラのシャッターのように瞬間的に日付けを切り替えられる機構を作りたい」と、技術者に提案したことから開発が始まったと言われるデイトジャスト機構。
日送り車に連動する歪んだハートのような形状のカム[10]と、先端の突起部分がそのカムに接するカレンダーヨーク[13]と呼ばれるパーツ、そしてそのカレンダーヨークの突起部分をカムに押し当てているバネ[15]の三つが装備されており、時間が進むにつれ日送り車にある特殊な形状のカムが回転。カムの形状に沿ってカレンダーヨークが押し戻されて徐々にバネに力が蓄えられる。0時に差し掛かる部分のカムの形状は凹んだ形になっているため、その部分に差し掛かると押し戻されていたカレンダーヨークへの力が一気に解放され、同時に日送り車に作用。瞬時に日付けがひとつ進むというわけだ。
このデイトジャスト機構自体は当時としてはかなり画期的なことだったが、デイトジャストの功績はそれだけではない。左手首に着けたときに日付けを袖口から確認しやすいようにと3時位置の小窓に表示させた、紳士用腕時計の新たなスタイルを示したことだ。こちらのほうが当時の時計業界に与えた影響は大きかったと言えるのかもしれない。
デイトジャスト機構開発の発想の原点は“カメラのシャッター”だったのだ。
<参考文献>
・『ロレックスの力』(ワールドフォトプレス、2003年)P390〜P391
・出石尚三『ロレックスの秘密』(講談社、2002年)P143〜P149
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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