Kollokium(コロキウム)はマニュエル・エムシュ(右)、バルト・ヌスバウマー(中央)、アムル・シンディー(左)の3人によって2020年に設立された、日本未上陸のブランド。独立プロジェクトベースで時計の製作を行っている。
マニュエル・エムシュはルイ・エラールのCEOであり、かつてはロマン・ジェロームを率いたことでも知られる人物。バルト・ヌスバウマーはタグ・ホイヤーなどの時計ブランドのクリエイティビティとクリエーションを手掛けたデザイナー、アムル・シンディーはザ・ホロファイルの名前でも知られるウオッチインフルエンサー(2023年8月にルイ・エラールとコラボモデルを発表したことも記憶に新しい)である。
いずれも時計界で実績を積んできた目利きだが、様々なブランドの運営に携わるなかで、自分たち独自の時計をゼロから作りたい、という欲求が高まり、このコロキウムの創設に至ったそうだ。
当初から3人の創業者たちは、構造に妥協することなく自由にモノを創造することを思い描いており、確立された、または受け継がれた時計製造の枠組みに捉われることなく、何の制約もなしにファーストモデルの製作に取り組んでいる。
コロキウム プロジェクト 01
コロキウムの最初のプロジェクトとなる“コロキウム プロジェクト 01”は、ドイツが生んだ偉大なテクノバンド“クラフトワーク”のシンセポップと、アメリカのSF作家“フィリップ・K・ディック”のレトロフューチャーな背景からインスピレーション得たモデルだ。
この時計は一見シンプルに見えるが、熟視していくにつれてディテールがその造形を浮かび上がらせてくる。そして、そのユニークな造形は、質感、奥行き、光と闇の相互作用により、工業的でありながら、同時に幻想的な雰囲気を生み出している。伝統的な時計が古典的なオペラだとすれば、コロキウムは無骨なSFノワールと評価できるかもしれない。
まず目を引き付けられるのが文字盤の造形だ。文字盤は468本の円筒形マーカーを備えた3次元的な造形となっており、さらにこの円筒形マーカーは、高さと直径が異なる6種類で構成されている。円筒形マーカーにはサンドブラストが施され、さらに暗闇でオレンジ色に発光するスーパールミノバが手作業で塗布されている。なお、この複雑で立体的な文字盤は、射出成形プロセスによって実現されたものだ。
均一な近未来の工業都市を思わせる文字盤のパノラマビューと対比させるように、シンプルなブラックの時針と分針が設置され、この時分針にもオレンジのスーパールミノバが塗布されている。近未来的なカーブを描く赤い秒針も、存在感を主張しながら見事に文字盤のデザインと調和を見せている。
プロジェクト01 のケースはCNC機械加工を採用せずにダイキャスト(合金を高温で溶かし、金型に流し込む鋳造法)で製作されており、素材には316Lステンレススチールを採用している。十字型の造形を与えられたラグとミドルケースの2パーツ構造を採用し、バルブ形状のリューズを備えた構成となっている。 サイズは40mm(ミドルケースが38.5mm)、厚さは風防を含む10.6mm。ケースにはダイキャストスチール製のフックを備えた伸縮性的スタイルベルトが設置されている。
この建築的な造形をもつケースは、ベゼルを採用せずに、円筒形のサファイアクリスタル風防がケースに直接取り付けた設計も大きな特徴だ。ベゼルレスデザインはそれ自体がデザイン的な特徴となっているが、個性的な文字盤を際立たせるために、意図的に採用されたそうだ。 文字盤を覆うように設計された風貌は、視覚的な歪みが生じないように設計されており、極めてクリアな視認性を実現している。
裏ブタは特殊なネジで固定されているためムーヴメントを見ることはできないが、内部には 68時間のパワーリザーブを備えた、ラ・ジュー・ペレ社の自動巻きキャリバー、G101を搭載。
コロキウムのプロジェクト01の販売価格は2666.66スイスフラン(約44万2000円)。 公式ウェブサイトによると、初期ロットの99本は一般向け販売を行わず、 "フレンズ&ファミリー "プレシリーズと呼び、3人の創業者の友人と家族だけに割り当てられるそうだ。2024年第1四半期より一般リリースされる予定であることを示唆しているようなので、興味がある方は今後の動向をチェックしてみてはいかがだろうか。
》Kollokium(コロキウム)
公式サイト
https://kollokium.com/
文◎William Hunnicutt
時計ブランド、アクセサリーブランドの輸入代理店を務めるスフィアブランディング代表。インポーターとして独自のセレクトで、ハマる人にはハマるプロダクトを日本に展開するほか、音楽をテーマにしたアパレルブランド、STEREO8のプロデューサーも務める。家ではネコのゴハン担当でもある。
https://www.instagram.com/spherebranding/
【関連リンク】
■北欧デザイン×スイス製、スウェーデンの本格時計、Tusenö【実機レビュー】
■ 英国ブリストル発の本格ツールウオッチ、家具デザイナーが手掛ける“アルキン”
■テキサス発、スイス製のアウトドアウオッチ“Seaholm(シーホルム)”に注目