機械式時計が低迷するなかで生き残りをかけて独創的なモデルが生み出された1970年代、趣味性の高い機械式時計を求める愛好家の需要を受けて工芸品的な時計が復活した80年代、そして名門の復活と新興ブランドの誕生を背景にアイコンモデルを輩出した90年代。
1970年代〜90年代に製造された時計は一般的には単なる中古時計としてカテゴライズされることが多いのだが、この時代の時計には単なる“中古時計”という評価の枠では収まりきらない、アイコニックな意匠を備えた名作を見つけることができる。今回は、パテック フィリップが1996年に発表した異色モデル、“ネプチューン”を紹介していく。
PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)
ネプチューン
ノーチラス、アクアノートに続くスチール×ブレスレット仕様のスポーツラインとして1996年にリリースされた異色モデル。幅広のベゼルからブレスレットにかけて施された装飾など、パテック フィリップにしてはかなりクセが強い意匠が特徴となっている。
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1980年代後半からの機械式時計復権の流れを受けて、90年代半ばから各社が注力した新コレクションの開発。ブレゲのアエロバル、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズが登場したのもこの時期だが、パテック フィリップもその例外ではなく、96年にノーチラスのカジュアルラインとしてアクアノートを発表している。パテック フィリップがアクアノートで目指したのは新たなユーザーの開拓であり、従来のパテックの印象を覆すスポーティなデザインにより、このミッションを見事に実現したと言える。
ただし、当時、新たに発表されたコレクションがすべて支持を集めたわけではない。日の目を見ることなく、ひっそりと姿を消した時代の徒花といえるのが、90年代の後半に登場した“ネプチューン”だ。
ジェラルド・ジェンタがデザインを手掛けたアクアノートのスポーティなデザインとは対照的に、スポーツとドレスの中間ともいえるスタイルと、装飾的なディテールのデザインが特徴。独自設計されたブレスレット、ブレスレットと連動したベゼルの装飾と、少々クセの強いデザインのため現在の感覚で見るとレトロな印象を感じさせるが、そこが良くも悪くも90年代らしい雰囲気を感じさせる。パテック フィリップが、名門の地位に甘んじることなく果敢なチャレンジを試みた歴史的な記録、という点もマニア心がくすぐられるポイントだろう。
気になるのが実勢価格だろう。正直、パテック フィリップのなかでは知名度が低いモデルということもあり、十数年前まではユーズドの実勢価格で70万円台だったのだが、現在では近年のラグジュアリースポーツブームの影響もあって250万円〜350万円台に上昇している。さらに時代を経ていくことでどのような評価を獲得していくのか、今後の動向が楽しみなモデルと言えるだろう。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
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