小スライド 連載記事 @kikuchiのいまどきの時計考

【なぜメーカーは明記しない?】同じGMT付き時計でも海外時間の設定方法が異なる2タイプ存在すること。新作6選も!

筆者が展開する時計ブランド「アウトライン」と人気セレクトショップ「チックタック」とのコラボ企画第4弾。機械式の本格GMTを装備した“アウトライン GMT-1950”。12月16日発売に先駆けて現在、クラウドファンディング「ウオッチメーカーズ」において特別価格にて先行予約を受け付け中

上に掲載したアウトライン GMT-1950のように、時分針のほかにもうひとつGMT針(24時間で1周する赤い針)を備えたGMTウオッチは、同時に二つの時間帯を表示できることから時差のある海外に旅行した際にとても便利な機能である。ただ、このGMT機能を装備する安価な腕時計というとクォーツ式が主流で、機械式となるとそのほとんどは高額なスイス製となり、国産はセイコー製ぐらいしかなかった。

理由は単純でシチズン ミヨタにしてもセイコーにしても、日本メーカーの外販用と呼ばれる他の時計メーカーに供給する汎用自動巻きムーヴメントにGMT機能を装備した機械がいままで無かったからだ。おそらくはクォーツ式で事足りていたということなのだろう。

それが昨年2月にシチズン ミヨタから自動巻きの新型でGMT機能搭載機のCal.9075、セイコーも夏頃に同じくGMT機能を持ったCal.NH34という自動巻きムーヴメントが発表された。機械式のGMTウオッチに対する市場ニーズが世界的に高まっていることが背景にあるらしい。つまりこれでようやく、安価なGMTウオッチの製品化が手軽にできる環境が整ったというわけである。

それに伴い、この日本製GMTムーヴメントを使った10万円前後のGMTウオッチが、今年になってから様々なメーカーから登場し始めている。日本ではまだ少ないものの海外の小規模メーカーを調べるとかなり多いことがわかる。

さて、この自動巻きのGMTムーヴメントだが、GMT機構の操作法によって2種類あることをあまり知られていない。それはローカルタイム(渡航先の時刻)の設定方法による違いで、ひとつは “時針単独可動型(フライヤー型)”、もうひとつは“GMT針単独可動型(コーラー型)”である。

自動巻きのGMTムーヴメントには時針を単独で動かす「トラベルGMTタイプ」とGMT針を直接操作する「オフィスGMTタイプ」の2種類がある

“時針単独可動型”とは、時針だけが動かせる機能を備えているため、例えば日本から海外へ出張した際、時分針にその渡航先の時刻を簡単に設定できるという点が大きなメリットだ。つまり海外旅行に適したGMTということで“トラベルGMT”とも呼ばれたりする。なおホームタイム(日本時間)はGMT針で確認する。ちなみにロレックスの現在のGMTマスター II はまさにこのタイプだ。

一方の“GMT針単独可動型”は、GMT針だけを操作するタイプである。時分針はホームタイム(日本時間)のままでGMT針だけを24時間ベゼル上の海外の時刻に合わせる。設定が簡単なため日本にいて海外とのやり取りの際など、メインは日本時間で時々海外の現在時刻を確認したいという場合に好都合なタイプだ。こういった点から“オフィスGMT”とも呼ばれる。

このように使い勝手が違うため、GMT機能を日常で実際に使うことを前提としている人にとっては、実はけっこう重要なポイントなのだ。しかしながら、全部を見たわけではないが、筆者がざっと確認した限りでは、時計メーカーの商品仕様に「GMT機能」としか記載がなく、どちらのタイプなのかが明示されてないことが多い。

おそらくメーカーはその必要性をあまり認識していないんだということなのだろう、これからGMTウオッチも増えていく傾向にあるとするならば、ぜひGMT機能の操作方法がどちらのタイプなのか、操作説明を読まなくてもひと目でわかるように、ぜひ明記してもらいたいものである。

ちなみに、先に紹介した日本製外販用GMTムーヴメンは、シチズン ミヨタのCal.9075は “時針単独可動型(トラベルGMT型)”で、セイコーのCal.NH34は“GMT針単独可動型(オフィスGMT型)”となる。

>>>次ページで「GMT機能付きの日本製自動巻きを搭載する2023年新作6機種」を紹介

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