最初に開発したのはジャガー・ルクルト
当時IWCのGSTクロノにも搭載
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ジャガー・ルクルト製のメカクォーツを搭載した1990年代のIWCのGSTクロノグラフ。ETA7750を搭載した機械式タイプも併売されていた
さて、このメカクォーツだが、元祖は1987年に開発されたジャガー・ルクルト製のCal.630というムーヴメント。当時はジャガール・ルクルトのほかIWCのGSTクロノグラフにも採用されたことでも知られる。
ただ現在はというと、生産しているのはセイコーのVKシリーズだけで、セイコー自体もかつてはワイアードのクロノグラフに搭載していたが、電池のいらないソラー式が主流なった日本の一般時計市場ではなかなか難しいのか、公式サイトを見る限りではいまはワイアードのクロノグラフも通常のクォーツクロノになっているようだ。
ではなぜ日本で愛好家を中心に注目されるようになったのかというと、メカクォーツは主に外販用のクロノグラフムーヴメントとしてセイコーマニュファクチャリングという会社を通じて世界に販売されており、海外にある小規模の独立系時計メーカーの多くが、このセイコー製メカクォーツを採用したクロノグラフウオッチを製品化していることが背景にある。
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セイコー製メカクオーツVK64を搭載したファーラン・マリのMr. Grey 。2021年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)のチャレンジ部門にノミネートされ人気に。価格も当時の日本円換算で5万円台だった
そして、それらの時計メーカーの中には、高額な機械式クロノグラフムーヴメントを使わずに、あえてメカクォーツを採用することでコストを抑え、しかもムーヴメント自体も小さく扱いやすいこともあって、1940年〜50年代のクロノグラフの名機を現代に再現するブランドも出てくるなど、そのクオリティの高さから海外の時計愛好家のみならず日本の時計愛好家の間でも注目されるようになったというわけである。
なかでも特に時計界のアカデミー賞と称されるスイスの時計イベント“ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)”においても、超有名な高級時計メーカーに混じってメカクォーツを採用したクロノグラフウッチ(写真)が高い評価を受けたことも大きかったと言えるだろう。
なお、セイコーのVKシリーズには、現在7種類のムーヴメントがラインアップしている。特によく使われるのが、横に二つのインダイアルが並んだVK64とインダイアルが横向きに三つあるVK63である。なかでもVK64を採用したクロノグラフウオッチは、古典的な雰囲気が強まるため多くのブランドが採用する。