コロナ禍の影響で市場が激変している近年の時計界。日本の市場は一部の高級ブランド以外が特に停滞感が強い印象だが、海外ではそんななかでも新た動きを見出すことができる。クラウドファンディングという新たな資金調達方法が確立したことで、ここ数年で時計ブランドの創設が増加。さらに越境ECによるビジネスモデルを活用することで、小規模の時計ブランド、いわゆるマイクロブランドが存在感を強めているのだ。
中心となっているのはやはりスイスを筆頭にした時計立国なのだが、近年の傾向として注目したいのが、休眠状態となっていた古豪ブランドの復活だ。時計界にはかつてアイコニックなコレクションで一時代を築きながら、1970年代以降にクォーツ革命などの影響を受けて休眠状態となったブランドが数多く存在している。そうした時計ブランドは、メジャーではないが時計好きの間で支持を集めている名作のアーカイブを持っており、魅力的なヘリテージモデルを展開して、目が肥えた時計ファンから支持を集めているのだ。製造数が少なく購入しにくいという留意点もあるが、流通量の少なさが逆にプレミアム性を高める役割も果たしており、時計好きから注目を集めているブランドがいくつも誕生している。今後ブレイクする可能性もあるため、先物買いの意味でもチェックしておいて損はないだろう。
今回注目したエクセルシオパーク、イエマ、アクアスターは特にアーカイブの復刻を積極的に進めておりブランドの主要コレクションとして打ち出している。いずれも手の届きやすいミドルレンジの価格帯なのだが、ベゼルやケースの造形とサイズ、インデックス、針を含めた文字盤の質感などをじっくりと見ていくと、思わずにんまりさせられる上々のクオリティを実現している。
Exelsior Park(エクセルシオパーク)
クロノグラフ
スイスフランの高騰やクォーツウオッチの台頭などを背景に、1970年代から80年代にかけて、多くのスイス時計メーカーが廃業を余儀なくされた。1866年にスイスのサン ・ ティミエで創業したクロノグラフ専門メーカー、“エクセルシオパーク”もそのひとつである。かつて同社は様々なブランドにクロノグラフムーヴメントを供給した実績があり、その耐久性の高いムーヴメントが搭載された当時のモデルは、いまだ多くの時計ファンから支持を受けて絶大的な人気を誇っている 。そんなエクセルシオパークが、ニバダ ・ グレンヒェン 復活の立役者でもあるギヨーム ・ ライデ氏とユリウスグループによって復活を遂げ、2023年から日本での販売が開始されている。
アンティーク感あふれる文字盤やクロノグラフのプッシャーは、往年のモデルのデザインを再現したもの。かつては自社製のクロノグラフムーヴメントを搭載したが、現代版では、セリタ社の手巻きCal.SW 510 BH Bをトップグレードに仕上げたムーヴメントを搭載する。ケースは40mmを切る程良いサイズ感で、100m防水を実現。アンティークさながらの雰囲気を普段使いとして楽しめる。アンティーククロノグラフで人気の高いブラック文字盤仕様。またすべてのモデルにソリッドバックとシースルーバックが付属しており、どちらか好みのほうを選択できる。
■Ref.95003M20O。SS(38.9mm径)。10気圧防水。手巻き(Cal.SW510 BH B)。29万2600円
【問い合わせ先】
エイチエムエスウォッチストア 表参道
TEL.03ー6438ー9321
YEMA(イエマ)
ネイビーグラフマリーンナショナルGMT
スイス国境に近いフランスのジュラ地方で1948年に創設。60年代に300m防水のダイバーズウオッチ“スーパーマン”、レガッタタイムを搭載した200m防水のクロノグラフ“ヨッティングラフ”など機能性と独自性を兼ね備えた実用時計を次々とリリースしたが、80年代以降、セイコーの傘下に入るなど売却が重なって低迷期に入る。2004年に再びフランス資本のブランドとなり、新生イエマとして本格的な時計製造を開始しており、現在は過去の名作を再現した復刻コレクションを中心に、時計好きの琴線に触れる魅力的なモデルを展開している。
“ネイビーグラフマリーンナショナルGMT”は、1970年代にFOST(フランス海軍戦略海洋部隊)の隊員用に製造されたナビグラフモデルをベースに、フランス海軍と共同で開発された軍用グレードのツールウオッチだ。両方回転ベゼル仕様のため厳密にはダイバーズウオッチに当てはめることはできないが、プロ仕様の300m防水に加え、GMT機能を搭載。筆記体のロゴ、感嘆符の形をした夜光インデックス(12時、6時、9時)など、1970年代にFOST(フランス海軍戦略海洋部隊)の隊員用に製造されたナビグラフからデザインを継承しつつ、デザイン、機能の両眼でブラッシュアップさせている。
ムーヴメントはインハウスキャリバーであるYEMA3000を搭載している。設計、プロトタイピング、組み立て、メンテナンスは、フランス、モルトーのワークショップで行われており、最大42時間パワーリザーブ、平均日差±10秒(最大誤差比率±25秒/日)の精度を備える。また、デフォルトで時計に設置されているステンレススチールブレスレットに加えて、1970年代にフランス海軍の戦闘ダイバーによって製作された“MNストラップ”が付属するのも魅力。使用済みのパラシュートから作られたストラップが原点とされており、NATOストラップの優れた代替品として活用された歴史をもつ。
■SS(38.5mm径)。30気圧防水。自動巻き(Cal. YEMA3000)。19万4700円
【問い合わせ先】
イエマジャパン
TEL.03-5875-8810
》ネイビーグラフマリーンナショナルGMT先行予約サイト
https://timegear-onlineshop.com
AQUASTAR(アクアスター)
ディープスターⅡ
“アクアスター”は1962年にフレデリック・ロバートによってスイスのジュネーブで設立された時計ブランド。ジャンリシャールのサブブランドとしてダイバーズウオッチを展開し、革新的なダイバーズウオッチを次々と発表した歴史をもつ。70年以降は何度かのブランド売却を経て休眠状態となっていたが、2019年に60年代に発売されたオリジナルの“アクアスター・ディープスター”を再現して復活。本格機械式時計ブランドとして再スタートを切った。ディープスターⅡは、1963年に発売されたオリジナルのディープスターを進化させた進化系と言えるアクアスターのフラッグシップコレクション。
36.75mmの着け心地が良いサイズ、サイクロプススタイルのモノコンパックスカウンター、複数の潜水時間と減圧時間を計算できる特許取得の無減圧テーブルベゼルなど、60年代のオリジナルモデルを再現したもので、一目でわかるアイコニックなデザインが目を引きつける。オリジナルのアシンメトリーなサブダイアル、スモールランニングインジケーター、過去に特許取得したマルチプルダイブ・デコンプレッションベゼルテーブルを見事に再現している。
■SS(36.75mm径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.SW290)。34万5400円
【問い合わせ先】
エイチエムエスウォッチストア 表参道
TEL.03ー6438ー9321
文◎船平卓馬(編集部)
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