時計好きの方からは「そんなこと知っているよ」と言われそうだが、修理技術者のクロノドクター・久保氏が言うには、持ち込まれる修理品を見ていると、当たり前のことでもけっこう知らないまま日常的に着けている人も意外に多いらしい。そこで今回はうっかりやってしまいかねない代表的なものを三つ紹介したい。
1、【注意したい!いつも身近にあるスマートフォンとタブレット】
「磁気帯び」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ゼンマイや歯車など、金属製の多くのパーツで構成される機械式時計は、水と磁気が天敵である。約8万A/mの耐磁性能を有する耐磁時計“ミルガウス”は別として、いくら頑丈に作られているロレックスとはいえ、一旦磁気の影響を受けて磁気帯びすると、途端に遅れや進みといった、精度に狂いを生じさせてしまう。
これは自然には直らないため、時計修理店に持ち込んで脱磁処理をしてもらう必要があるなどけっこう面倒なことになる。そして近年特に気を付けたいのがいつも身近にあるスマートフォンである。帰宅して腕時計を外した後に何気なくスマートフォンのそばに外した腕時計を置いてしまうということはないだろうか。
実は、スマホのスピーカー部は約1万6000A/mとかなり磁気が強いためかなり危険なのである。ただ、時計を5cm以上離してさえいればこれは回避できるため意識しているといいだろう。
ちなみに最新の3200系ムーヴメントは、それ以前の3100系から採用されていたパラクロム製ヒゲゼンマイに加えて、ニッケル・リン製の脱進機が新たに採用されていることから、両者とも磁性体の金属のため、ある程度強い磁場にさらされても金属特性は変化しにくいよう作られているそうだ。ただ、いずれにせよ近づけないに越したことはないことは確かである。
2、【20時から深夜4時までの時間帯での日付け調整はNG】
日付けを合わせたいときに気を付けなければならないのが、変更禁止時間帯があっていつでも調整できるものではないという点である。ロレックスに限らず午前0時になると瞬間的に切り換わる日付け。その前後4時間(20時から深夜4時)は日付けの歯送り爪が噛み合っている状態のため、この時間帯に無理に日付けを変更すると爪を破損してしまう恐れがあるためだ。
なお、最新の3200系ムーヴメントを搭載する、型番でいうと“Ref.126〜”または“Ref.228〜”から始まるメンズモデル、“Ref.279〜”から始まるレディースモデルについては新形状の引き込み爪が採用されたためこの日付け変更禁止時間帯は設けられていない。そのためいつでも変更することが可能だ。
加えて、旧型の3100系ムーヴメントであっても、短針を単独で動かすことで第2時間帯を設定できる、GMTマスター II やエクスプローラー II については日付けの調整方法自体が違うため禁止時間帯は無い。
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